【茶道】利休七哲って誰!? 『江岑夏書』をもとに茶の湯を愛した7人の武将を紹介
この記事の目次
利休の7人の弟子
『江岑夏書』に基づく利休の7人の弟子
利休七哲の顔ぶれが史料によって異なるのは、千利休が直接7人の武将たちを指名したわけではなく、没後しばらくしてから書物に記載されるようになったからです。利休自身は存命中に書物を著わすことはなく、その教えは口伝や弟子たちの記録によって残されているのみです。
そのため、「利休七哲」のメンバーに関しても諸説ありますが、利休のひ孫にあたる江岑宗左(こうしんそうさ)が1663(寛文3)年に記した『江岑夏書』に基づく選定が最もよく知られています。この書物は、宗左が父親の宗旦(そうたん)から聞いた話を子孫に伝えるために記録したもので、生前の利休を知る最後の世代であった宗旦の言葉をもとに書き綴られています。
ここからは『江岑夏書』に記されている7人の弟子について個別に見ていきます。
蒲生氏郷
がもううじさと
織田信長、豊臣秀吉に仕えた蒲生氏郷は、最終的に会津92万石を領有した大大名です。茶の湯への造詣も深かったようで、利休からは「文武二道の御大将」と評価され、「赤楽早船」という銘の茶碗を贈られています。
また、蒲生氏郷と千家の関係性を語るうえでけっして外すことができないのが、利休の切腹後に息子の少庵を庇護したことです。その後、秀吉に許された少庵は京都に戻り、千家の復興へとつながっていく過程で蒲生氏郷が残した功績は非常に大きかったと言えます。
高山右近
たかやまうこん
キリシタン大名として知られる高山右近は、茶の湯にも真摯な態度で向き合った人物とされています。1587(天正15)年に秀吉がバテレン追放令を発布すると、右近は棄教を拒否し、大名としての地位を失ってしまいます。
この時、利休は秀吉の命を受けて、キリスト教から改宗するよう右近を説得しています。それでもキリスト教を捨てなかった右近は、領地を没収され加賀前田家に身を寄せることとなります。その後も2人の関係性は終生にわたって続いたようで、利休切腹の前に催された一客一亭の茶会(1人の客と亭主だけの茶席のこと)に右近が参加しています。
細川三斎
ほそかわさんさい
細川三斎は、弟子のなかでも特に利休の信奉者だったとされています。利休の行いを忠実に守ることに重きを置いた人物で、熊本藩の茶道役にも利休のやり方をそのまま継承するように命じていました。
そのため、現在伝わっている三斎を流祖とする点前は、他の流儀に比べて丁寧な所作が特徴で、古い所作の形が多く残されていると考えられています。
芝山監物
しばやまけんもつ
芝山監物は信長、秀吉に仕えた武将で、上記の3人と比べるとあまり有名な存在ではありません。ですが、千利休とは非常に仲が良かったようで、現在残されている利休の手紙のうち監物宛が一番多く、利休が最期に書いた手紙も監物宛となっています。
また、「芝山緞子」など自身の名前を残す道具もあることから、茶の湯への貢献が高かった人物だと考えられています。
瀬田掃部
せたかもん
瀬田掃部の来歴は詳しく分かっていないものの、秀吉に仕えた武将で、豊臣秀次の粛清事件に連座して死刑に処せられたとされています。
また、茶杓削りの名手として知られ、「掃部形」と呼ばれる大きな櫂先の茶杓を愛用するなど、独創性を持った茶人として活躍しました。
牧村兵部
まきむらひょうぶ
2万6千石を領有する大名として活躍した牧村兵部も、創意工夫に優れた茶人でした。『天王寺屋会記(てんのうじやかいき)』という茶書には、580(天正8)年に兵部がユガミ茶碗を使用したことが記載されています。
これは「へうげもの」と呼ばれた古田織部が歪んだ茶碗を使用したという記録より前のことであり、その先進性を感じ取ることができます。
古田織部
ふるたおりべ
利休が亡くなった後、2代将軍徳川秀忠に茶の指導を行ったことから、天下一の宗匠としての地位を確立しました。武家の茶の湯の作法を完成させるとともに、創意に満ちた茶道具を作り出したことでも知られる人物です。
ちなみに『江岑夏書』には7人のなかで織部の茶の湯が最も良くないが、後に茶の湯の名人となったと記載されています。茶の湯に緊張感を求めた利休とは異なり、面白みのある趣向で自分なりの茶の湯の世界を作り上げたのが古田織部になります。
おわりに
千利休の弟子のなかで突出した人物7人を利休七哲と呼びますが、これは江戸時代に入ってからの呼称のため、書物によっては信長の弟である織田有楽斎(おだうらくさい)や前田利家の嫡男である前田利長(まえだとしなが)などが選ばれている場合もあります。
多くの人物の名前が挙がっているのは、それだけ利休の茶の湯が当時の武将たちにも深く浸透していたことの証拠とも言えます。
利休と弟子たちのエピソードを垣間見ることによって、当時の茶の湯の影響力の大きさを感じ取ることができるのではないでしょうか。
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