【吉祥文様】見た目も華やか縁起が良い! 宝尽くし文様の柄と意味を紹介
宝尽くし文様とは
「宝尽くし」は、その名のとおりいろいろな宝物を集めた文様のことで、吉祥文様のひとつです。
吉祥文様とは縁起物である物品や動植物を描いたもので、特に晴れ着などおめでたいときに好まれます。確かに、見た目も華やかなうえに縁起がよく、慶事に身に着けるのにふさわしい柄と言えるでしょう。もちろん、服以外の小物などにも取り入れられるし、験かつぎになるので普段から好んで使われることもありました。
何を「宝」とするかは、その時々によって微妙な違いがあるようですが、今回の記事では、宝尽くし文様によく登場する、定番の宝物をご紹介したいと思います。
宝珠
[ほうじゅ]
宝珠は「如意宝珠」ともいい、なんでも思いのままに叶える玉です。病気を治す力もあると言われています。
仏教においては仏や仏の教えの象徴と考えられ、仏像でもこの宝珠を持っているものが時折見受けられます。
また、龍が爪のついた足で握り込んでいる姿もあちこちで見かけるので、そのほうがイメージしやすいかもしれません。
タマネギのような形をしていることが多く、図案によっては炎のようなものが添えられています。
宝巻
[ほうかん]
巻物、巻軸、巻子本などとも呼ばれ、仏教のありがたい教えやお経、門外不出の内容が書かれているとされています。
そうした宝巻は知恵の象徴でした。そのため、宝巻は学業成就の縁起物ともなっています。
また、斜めに交差して置かれている場合は、「祇園守」ともいいます。これは、京都の八坂神社の守り紋として使われていることからきています。
軍配
[ぐんばい]
軍配は、武士が合戦の指揮に使っていたもので、軍配団扇とも言います。
今では、相撲の行司が使うのを目にするくらいでしょうか。
もともと団扇は邪気を払うものとされ、天狗の持ち物にもなっていました。方位・方角などが書かれたこの軍配を、武士が好んで持つようになったのは室町時代ごろとされています。
江戸時代に入って天下太平の世になると、権威や象徴的な存在になり、勇ましさを表す縁起物としての意味合いが強くなりました。
七宝
[しっぽう]
仏典で、この世の七つの宝と扱われているものです。工芸品の七宝焼きの語原とされます。
ただ、その内容は書かれているものによって異なるようです。
般若経:金、銀、瑠璃(ラピスラズリ)、瑪瑙、しゃこ貝、珊瑚、琥珀
無量寿経:金、銀、瑠璃(ラピスラズリ)、瑪瑙、しゃこ貝、珊瑚、玻璃(水晶)
法華経:金、銀、瑠璃(ラピスラズリ)、瑪瑙、しゃこ貝、真珠、玫瑰(まいかい)。
玫瑰(まいかい)という名前は特に聞き覚えが薄いかもしれません。これは、中国の赤い石と言われています。また、中国の赤いバラ科の植物で、ハマナスの一種とされる落葉低木も「玫瑰」と呼ばれます。
打ち出の小槌
[うちでのこづち]
一寸法師の昔話で有名な打ち出の小槌。元は鬼の宝物であるとの考えもありますが、大黒さまの持ち物としても有名です。
念じながら振ると、欲しいものが出たり願いごとが叶うと言われています。
また、「打つ」が「討つ」の音に通じることから、武将たちにも好まれたそうです。
隠れ蓑
[かくれみの]
隠れ笠として描かれてることもあります。笠が男性の文様、蓑が女性の文様とされています。
現代では、人目を欺いて真実を隠すためのものを指すように使われることが多い言葉なので、縁起物としてはピンとこない人もいるかもしれません。
元々は、災難や危険から自分の身を隠してくれる、ありがたい存在でした。また、隠れ蓑は天狗の持ち物になっており、これを身に着けるとその姿が見えなくなってしまうと言われています。
金嚢
[きんのう]
お守りや香料など貴重品や大切なものを入れる巾着のことで、こちらも打ち出の小槌と同様、大黒さまの持ち物だったりします。
大黒さまがいつも背負うように肩にかけている袋がありますよね? あれこそ、金嚢なのです。見るからに何か詰まっているように見えるこの袋、もちろん中身は金銀財宝です。
宝鑰
[ほうやく]
宝鑰とは鍵のことですが、鍵が縁起物であることを不思議に思う方もいるでしょうか。
実はこの鍵は、宝物庫の鍵なのです。
先端がぐるぐると、雷文形になっているのが特徴です。
鍵のついた宝物庫を持つことは、よほどの富を持つ人の特権でした。そのため、富や福徳の象徴として文様に使われるようになったようです。
丁子
[ちょうじ]
釘のような形をした丁子。「クローブ」というスパイスのことだと言えば、ピンとくる方もいるでしょうか。
インドネシア原産で、胃腸を温める漢方薬となるほかに、香りが豊かでカレーやチャイに入れられます。また、この丁子からは油も採れ、日本刀の錆止めとしても使われていたようです。
貴重な薬、健康、長寿を表していることから、縁起物の仲間入りをしたようですね。
分銅
[ふんどう]
分銅は、秤のおもりとして使われていました。江戸時代、両替商の象徴となり、今でも銀行の地図記号として目にすることがある形ではないでしょうか。
真ん中がくびれている、瓢箪にも似た少し不思議な形。一説によると、これは蚕の繭を表しているそうです。日本の重要な輸出品であった生糸ですが、江戸時代の初めあたりは需要に供給が追い付かずに輸入に頼るほどだったそうで、これもまた貴重品だったようです。
そういった背景から、もちろん分銅は貯蓄や富の象徴となっており、縁起物として扱われるのも納得の物です。
まとめ
さまざまなものが描かれている宝尽くし文様。
ひとつひとつの由来や意味をこうして追っていくと、宝尽くしがどれだけ縁起のよさに満ちている文様か実感できるのではないでしょうか。
身に着けているだけで全てを味方につけたような、心強い気分になれそうですよね。
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