【ウイスキー】森と水がつくる香り。ジャパニーズウイスキーの文化を味わう
スコットランド・アイルランド・アメリカ・カナダ・日本は、世界の5大ウイスキーと呼ばれる産地です。
他国に比較すると歴史が浅い日本のウイスキーですが、ものづくり精神に支えられた丁寧な品質管理と製造技術のもと、現在では世界でも冠たる銘柄を次々と生み出しています。
日本のウイスキーは単に海外の技術を取り入れたものではなく、日本の水や気候、そして繊細な味覚文化のなかで独自に発展してきました。ジャパニーズウイスキーには、日本の自然とものづくりの精神が反映されています。
今回の記事では、ウイスキーの製造方法と歴史を概観したうえで、日本の代表的な蒸溜所について紹介します。
ウイスキーの定義
醸造酒と蒸留酒
初期のアルコール飲料は、原料に含まれたり、麦芽や米麹から作り出されたりする糖分をアルコール発酵させた醸造酒でした。ワイン、ビール、日本酒がその代表例です。
ブドウを原料とするワイン、大麦を原料とするビール、米を原料とする日本酒は、世界の三大醸造酒と呼ばれ、比較的製造方法がシンプルなため、長い歴史を持つアルコール飲料でもあります。
一方で、醸造酒を加熱し、沸点の違いを利用してアルコール成分を抽出した飲み物を蒸留酒と呼びます。水の沸点が約100℃であるのに対して、アルコールの沸点は約78℃です。そのため、蒸気となったアルコールを冷却して再び液体に戻すことで、アルコール濃度の高い蒸留酒が得られます。
今回紹介するウイスキーは、大麦麦芽(モルト)やトウモロコシなどの穀物を原料とした蒸留酒です。その定義は国によって若干異なりますが、穀類を原料として蒸留を行い、木樽で熟成させる点は共通しています。
なお、日本では古くから「水が酒の味を決める」と考えられてきました。日本酒づくりと同様に、ウイスキーにおいても仕込み水は重要な要素であり、日本各地の蒸溜所は良質な水を求めて立地が選ばれています。
木樽の種類や熟成期間によって味や香りは大きく変化し、ウイスキーの熟成期間は短くて3年以上、長いものでは10年以上に及ぶこともあります。
ジャパニーズウイスキーの歴史
スコットランドもしくはアイルランドが発祥とされるウイスキーが、日本に輸入されるようになったのは明治時代からです。
その後、「マッサン」の愛称でも知られる竹鶴政孝が、サントリーの創業者である鳥井信治郎とともに、日本初の本格的なウイスキー蒸溜所である山崎蒸溜所(大阪府)で国産ウイスキーの製造に取り組みます。
しかし、完成した「サントリー白札」はスコッチウイスキーの技術を色濃く反映した個性的な風味であったため、当時の日本の消費者には受け入れられにくく、販売は伸び悩みました。
その後、本格的なスコッチスタイルを追求したい竹鶴政孝と、日本人の嗜好に合うウイスキーを目指したい鳥井信治郎との方向性の違いもあり、竹鶴は会社を離れます。そしてスコットランドの気候に近い北海道余市に拠点を移し、1940年に「ニッカウヰスキー」を発売しました。
日本のウイスキーづくりは、スコットランドの技術を出発点としながらも、日本人の味覚や生活文化に合わせて改良されてきました。こうした「海外の技術を受け入れながら独自の文化として育てる姿勢」も、日本のものづくりの特徴のひとつといえます。
日本の代表的な蒸溜所
山崎蒸溜所
[大阪府三島郡島本町山崎]
都市に近く輸送に適しているうえ、上質な水が採取できることから、1923年に日本初の本格的なモルトウイスキー蒸溜所として建設されました。
スコットランドでは複数の蒸溜所の原酒を交換してブレンドすることが一般的でしたが、歴史の浅い日本ではそれが難しかったため、ひとつの蒸溜所で多様な原酒を造り分ける独自の工夫が行われました。
単一の蒸溜所の原酒のみで造られたウイスキーはシングルモルトウイスキーと呼ばれ、「山崎」はその代表的な銘柄です。わずかな甘みと重厚で華やかな味わい、ベリー類のようなフレッシュな香りが特徴です。
山崎の地は古くから名水の産地として知られ、茶の湯の文化とも関わりのある土地です。こうした水の文化の積み重ねも、日本最初の蒸溜所がこの地に建てられた理由のひとつとされています。
余市蒸溜所
[北海道余市郡余市町]
本格的なスコッチウイスキーの製造を目指して、竹鶴政孝が建設した蒸溜所です。
スコットランドに似た気候風土に加え、原料となる大麦や燃料となる石炭、泥炭(ピート)が手に入りやすい環境であったため、この地が選ばれました。
職人が石炭をくべて火力を調整する「石炭直火蒸溜」が現在でも採用されています。
また、泥炭(ピート)は大麦麦芽を乾燥させる際に使用され、独特のスモーキーな香り(ピート香)を生み出します。代表銘柄の「余市」は、石炭直火蒸溜による香ばしさとピートのスモーキーさに、木樽由来の香りが重なった厚みのある味わいが特徴です。
余市では現在も伝統的な製法が守られており、効率よりも品質を重視する姿勢に、日本の職人文化の一端を見ることができます。
白州蒸溜所
[山梨県北杜市白州町]
山崎蒸溜所の創業から約50年後の1973年、原酒のバリエーションを広げる目的で設立された蒸溜所です。
周囲を森林に囲まれていることから「森の蒸溜所」とも呼ばれ、仕込み水には南アルプスの伏流水が使用されています。この水は硬度約30の軟水で、繊細でやわらかな酒質を生み出します。
白州蒸溜所では多様なタイプのモルト原酒が生産されており、ピート麦芽を使用したものなども造られています。代表銘柄の「白州」は、森の香りを思わせる爽やかな香りと軽快でやわらかな味わいが特徴です。
森に囲まれた環境のなかでつくられる白州のウイスキーは、日本の自然と共に酒を育てるという思想を象徴しています。自然環境そのものが味わいの一部となる点も、ジャパニーズウイスキーの特徴のひとつです。
おわりに
ウイスキーにはさまざまな飲み方があり、好みに合わせてアルコール度数や香りの楽しみ方を調整できます。
代表的な飲み方としては、ソーダ水で割る「ハイボール」、水などのチェイサーと交互に飲む「ストレート」、ウイスキーと常温の天然水を1:1で割る「トワイスアップ」、氷を入れて味の変化を楽しむ「オン・ザ・ロックス」などがあります。
ウイスキーはアルコール度数が40度前後と比較的高いお酒のため、自分に合った飲み方でゆっくり楽しんでみてください。
