【弓道】狩猟や戦場、儀礼で用いられた弓術!現在の弓道へつながる歴史を簡単に紹介
弓道とは
最初に日本の武道とは、一般的に柔道・剣道・弓道・相撲・ 空手道・合気道・少林寺拳法・なぎなた・銃剣道の9種目を指します。
それぞれに歴史や内容は異なりますが、競技性よりも「人格形成」としての目的を持っているのが特徴です。そして練習ではなく「稽古」、練習場ではなく「道場」と言い、礼法を重視し、段位制を取るなどの共通点があります。
弓道は、古来より「三位一体」すなわち身体の安定、心気の安定、弓技の安定、この3つが合一して一体となることとされており、弓道の最高目標を「真善美」とし、「真」偽りのない真実の探求、「善」和平と平静を失わない境地、「美」真なるもの、善なるものは美しい、という考え方に全てが集約されています。
弓術のはじまり
弓は古くから原始的な狩猟の道具として、世界各国の民族で使われてきました。しかし、日本の弓のように、長尺の弓を使う国は歴史的に見ても、どこにもありません。
アーチェリーは一般的に身長ほどの長さ(1.6m〜)が使われています。和弓のような長弓(七尺/2.12m〜)は扱いも難しく、短弓の方が構えやすく実利的なのに、日本は世界に例のない長大な弓のまま、現在まで引き継がれています。それはなぜなのでしょうか。
歴史をひも解くと、平安時代後期に文武両道に優れた武将として知られる源義家が、軍功の象徴として弓矢を白河法皇に献じたという記録があります。この時代から、弓体をもって武士の徳器とし、弓矢そのものを人格化した考えを持つようになったとされています。
日本の弓には崇拝観念があり、弓体の美を讃え、信仰の対象とし、天と地へ捧げる神聖なものとして神事にも使われてきました。芸術的価値を大切にしてきた日本独自の美意識が、現在の弓道として脈々と引き継がれているのです。
弓道の歴史
[4世紀]
応神天皇以降、礼記(中国、儒教の経書で五経の一つ)の「射義」の思想が日本の弓に大きな影響を与えました。
日本古代からの弓矢の威徳の思想と、中国の弓矢における「射をもって、君子の争いとなす。」という射礼思想礼から、朝廷行事としての射礼の儀が誕生しました。
[10世紀]
平安時代には中国で合成弓を作る技術を導入し、伏竹弓(ふせだけゆみ)、3枚打など、竹と木の合成弓が作られるようになりました。この頃の弓は後に「文射」と呼ばれる式典や神事のための射が中心でした。
[12世紀]
源頼朝が鎌倉幕府を開いた時代に、弓と馬の修練技術を通じて精神の高みに到達するという武士の道義が確立されました。武士として、身心の鍛錬および戦闘技術の訓練として犬追物(いぬおうもの:馬に乗り、犬を追いながら弓で射る競技)、笠懸(かさがけ:馬に乗り、遠い距離にセットされた的を射る競技)などが盛んに行なわれるようになり、後に「武射」と呼ばれる戦闘の弓へと変わっていきました。
[14世紀]
後醍醐天皇の時代には、武家社会に伝承された弓法を小笠原貞宗・常興が弓馬術礼法の基準として確立しました。その後室町末から徳川初期にかけての150年の間に、多くの流派が派生しました。
[16世紀]
鉄砲の伝来により戦闘具としての弓の時代は終焉し、弓術の目的は心身鍛練となり、技法が次第に精妙になっていきます。その一つが京都三十三間堂で行われた「通し矢」です。起源は12世紀平安時代末期の保元の乱の頃で、16世紀末安土桃山時代に盛んになりました。
[17世紀]
江戸時代になって弓は「術」として「道」として研修され、心身鍛練のための弓道が確立しました。
[20世紀]
明治28年には、古武道の保存と奨励を目的として京都に創立された大日本武徳会に弓道も含まれ、奨励されるようになります。そして大正時代以降、弓道は学校教育として正課やクラブ活動に採用され、学校体育として広く普及するようになりました。
弓道の道具
弓
弓の素材は、グラスファイバー・カーボン・竹の3種類があります。
弓の長さは7尺3寸(221cm)が基準で、弓の強さは弓を引いた時の負荷をkgで表示します。個人に適する弓の強さは、肩入れ(矢束まで引くことが)できる弓の強さの1/2が標準で、初心者は1/3から1/4(7kg~10kg)くらいが目安です。
矢
矢の素材は、ジュラルミン、カーボン、竹の3種類があります。
羽は七面鳥の羽を使用することが多く、白鳥や水鳥等の羽を用いられることもあります。長さは特に規定はなく、使用する人の矢束から矢尺(矢の長さ)が決まります。1組4本(試合ではプラス予備矢2本が必要)と巻藁矢一本を用意します。弓・矢はほとんどの道場で借りることが出来ます。
ゆがけ
手袋のような形状で、右手につけて弓を引く道具がゆがけです。
ゆがけには「三つがけ」、「四つがけ」、「もろがけ」の三種類があり、主に三つがけが使われています。素材は吸水性の高い鹿革を使い、専門の職人「ゆがけ師」が手仕事で製作しています。ゆがけは自分の手のサイズに合ったものを長きに渡って使用するものです。唯一無二の意味で使われる「かけがいのない」とは、このゆがけが語源となっています。
弦
弓に張り、矢を放つための道具です。
素材は「麻弦」と呼ばれる天然素材でつくられた弦と 「合成弦」と呼ばれる化学繊維でつくられた弦の2種類あります。弓に張った後には「まぐすね」で弦をこすり、摩擦熱で「くすね」をとかし、弦を強化してから使用します。弓が放たれる時に響く音を「弦音(つるね)」と呼びます。
道衣
弓道を始める際に最初に購入するのが動衣一式です。
上衣、袴、帯、足袋の4点で、一般的に男女とも上衣は白、袴は黒、足袋は白です。帯は一般的に角帯と呼ばれる男帯を使用します。基本的に稽古では動衣(稽古着)を着用しますが、段位が上がると色無地などの着物を着用することも多くなります。男性は黒紋付きに縞袴、女性は黒紋付きに黒袴・紺袴が礼装とされており、審査や講習会等の公の場に出る場合は、礼装で参加するのが決まりとなっています。
的
道場に設置されているのが的です。
的には霞的(かすみまと)と呼ばれる黒線3本のものと、星的(ほしまと)と呼ばれる中央に黒丸1点の2種類があります。近的競技の的までの距離は28m、遠的競技は55mないし90mの距離で設定されており、近的競技に使われる的は小的で36cm的か24cm的 、遠的競技では大的で1.58m的を使います。ちなみに36cmは人の胴、24cmは人の頭と同サイズと言われています。
まとめ
弓道は日本の伝統と美を体現する「真善美」を最高目標に掲げる武道です。
他の武道と比べ、基本となる型「射法」は至って簡単でシンプルです。しかも初心者から有段者まで同じ型を極めていくので、年齢問わず、初心者として始めやすい武道でもあります。関心のある方は、近くの弓道場を見学してみるのもよいでしょう。
的中した音だけが響く、凛とした道場の空気に、心を射られて弓道ファンになってしまうかもしれません。
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