【弓道】初心者のための基本動作『射法八節』まずはここから覚えよう
射法八節とは
[しゃほうはっせつ]
弓道の最高目的は「真善美」とされており、「真」偽りのない真実の探求、「善」和平と平静を失わない境地、「美」真なるもの、善なるものは美しい、という考え方に全てが集約されています。
安定した心の持ち方と、身体の整え方、正しい息合い、射法が大切であり、心・身・弓が混然一体となってこそ、正しい弓ができるのです。つまり、目的である正しい弓の結果として矢は的中するのであり、結果である的中のみを追って、目的を忘れてはいけないとされています。
『射法八節』
弓矢を持って射を行う時の基本動作のことで、これが正しくできるようになることが弓道の基本になります。一本の竹に八つの節があるように、一手射るという、一連の流れの中に、八つの重要な動作があります。
足踏み
弓を射る時の最初の足の踏み方、足構え。
的前に出る時は左手に弓、右手に矢を持ち、その先端は身体の中心の延長線上に向け、弓の先は床から10cm上に留めています。目線は的に向けたまま、的を射る立ち位置で脇正面に向かって立ち、両足先が的の中心と一直線上になるよう踏み開きます。この時足元を見てはいけません。
足の角度は約60度で扇状に開き、両足先の間隔は自分の矢束(やづか:弓を正しく引いた時長さ:およそ身長の半分くらい)になるよう立ちます。
胴造り
心気を丹田(へその下あたりのこと)に納めるように、重心を身体の中心に整える構え。
足踏みした両脚の上に上体を正しく安静に置き、腰を据えてうなじをまっすぐにのばし、呼吸を整えます。弓を左の膝頭に乗せ、右手は右腰の辺に置きます。全身の均整を整えて隙のない構えを作ることは、一連の射の根幹となり、射の良否がここで決まるとされています。
弓構え
射に移る直前の準備動作。
「取りかけ」「手の内」「物見(ものみ)」の三つの動作が含まれています。
ゆがけの右手親指を弦にかけ、肘を張るようにしながら薬指で親指を押さえるように構える「取りかけ」を行い、左手で弓を柔らかく握るように「手の内」を整え、両肘を張り、大木を抱えるかのようにゆったりとした構えをつくります。そしてゆっくりと頭を正しく的に向けて、目線を定めるように「物見」を定めます。
打起し
弓矢を持った左右の拳を上に上げる動作。
矢は水平に、身体と平行になるよう保ち、ゆったりとのびのびした気持ちで、胴造りの形が崩れないように打起こします。無風帯の日に、空に煙がゆったりと立ち昇る風情で、呼吸に合わせて静かに打起こすこととされています。
引分け
打起こした弓を左右均等に引き分ける動作。
左手は弓を押し、右手は弦を引き、矢は的に向かって水平を保ちます。左手拳は的の中心に向かって押し出し、右手拳は右肩先まで矢束(やづか)一杯まで引き、矢の柄が頬につくように口割り(くちわり:口の横)で引き納めます。
この時には身体が弓の中に割って入る気持ちが大切で、正しく行われると弓矢と身体が縦横十文字に構成され、弓体が一体になります。
会[かい]
心理的には縦横十文字を堅持しながら天地左右に伸び合うような無限の引き合いが続く状態。
ここまでの諸段階はこの「会」に到達するために行ってきたことで、要所での詰合いが十分に行われていなければいけません。
精神・身体・弓矢が混然一体となり、満を期して放たれる直前の伸合いの動作になります。
離れ
身体の中筋から左右に開くように伸長し、気合いの発動と共に矢が離れていく状態。
「会」と「離れ」は不離一体のもので、「会」で力が充足して矢に移り「離れ」が生じるもので、離すのではなく離されるものでもない、機が熟して自然に離れるものとされています。
縦横十文字に組み合った基本体型が堅持され、気力の充実によって軽妙に離れるのが良い「離れ」とされています。
残心
矢の離れたあとの姿勢。
「離れ」が終わりではなく、なお残されたものとして精神で言えば「残心」、形で言えば「残身」があります。一貫した射が完成した時には「残心」も自然と立派な縦横十文字の体勢が保たれています。
「残心」の良し悪しによって、射全体の良し悪しまでも判別され、射手の品位格調も反映されるとされています。
まとめ
『射法八節』は、禅に通じるような精神的な表現が多い事に驚かれたのではないでしょうか。どうしても専門用語が多いですが、動作の目的と意味がわかると弓道の奥深さもわかってきます。
冒頭で「昇段に的中は問われない」とお伝えしましたが、『射法八節』が正しく行われていれば、本来、矢は的に当たるはずなのです。
それでも「的に当てたい!」と思うのも人情です。
その心の葛藤を静められるようになった時に、初めて弓道の最終目的「真善美」の意味がわかるのかもしれませんね。