【文化財】国宝と重要文化財の違い! 有形、無形に天然記念物と様々ある分類を簡単解説
文化財とは
文化活動の結果として生み出されたもので、文化的価値のあるもの「文化保護法」によって保護の対象となるものの総称です。
「文化財保護法」とは、1950年に制定された法律で、文化財を保存、活用して、国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的としています。1949年1月26日に起きた法隆寺金堂の火災で、アジアの古代仏教絵画を代表する作品の一つとされていた、法隆寺金堂壁画が焼損してしまったことを機に制定されました。
「文化財」には、有形文化財・無形文化財・民俗文化財・記念物・埋蔵文化財・文化的景観・伝統的建造物群の7種類があります。
それぞれどのように種類別されるのかをご紹介します。
有形文化財
文化的所産で、日本にとって歴史上、芸術上、学術上価値の高い資料のことです。
「有形文化財」とは次のようなものを含む有形の文化的所産になります。
建造物・絵画・彫刻・工芸品・書跡・典籍・古文書・考古資料・歴史資料 など
また「文化財保護法」によって、有形文化財の中でも国が特に重要と判断したものは、文部科学大臣が「重要文化財」に指定します。
さらに「重要文化財」の中でも学術的な価値が高いもの、美術的に優秀なもの、文化史的意義の深いものとして、世界文化の見地からも重要とみなされたものは、「国宝」に指定されます。「国宝」もまた、文化庁の答申に基づいて文部科学大臣が指定します。
1996年からは、都市開発などで消滅が危ぶまれる近代建造物を守るために「文化財登録制度」が設けられ、保存と活用が必要なものは「登録有形文化財」に指定されることになりました。「登録有形文化財」の基準は、大きく建造物と美術工芸品の分野に別れます。
「登録有形文化財(建造物)」指定されるための選考基準は、原則として築後50年以上経過した歴史的建造物のうち、次のいずれかに該当するものとされています。
●国土の歴史的景観に寄与しているもの
●造形の規範となっているもの
●再現することが容易でないもの
これらの条件を満たしているものが登録され、登録されると修理のための設計監理費の補助や減税の措置が受けられます。登録有形文化財(建造物)の場合は、改修や改装が厳しく規制されている「指定文化財」とは異なり、外観を大きく変えなければ改修も改装も認めらています。
また、「登録有形文化財(美術工芸品)」に指定されるためには、原則として製作後50年を経過したもので、歴史的若しくは系統的にまとまって伝存したもの又は系統的若しくは網羅的に収集されたものであり、次のいずれかに該当するもの
●文化史的意義を有するもの
●学術的価値を有するもの
●歴史上の意義を有するもの
以上のような選考基準が設けられています。
「系統的」、「網羅的」ということでコレクションなどの一括資料になっているものを意味します。
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無形文化財
演劇・音楽・工芸技術その他の日本の無形の文化的所産で、歴史上または芸術上価値の高いものを指します。
「無形文化財」とは、人間の「技」そのものであり、その「技」を体得した個人または個人の集団によって体現されます。選定されるものには、次のような分野が対象とされています。
●芸能
雅楽・能楽・文楽・歌舞伎・邦楽・民俗芸能など
●伝統的工芸技術
陶芸・漆芸・染織・金工・木工・竹工など
また、「無形文化財」に登録された中でも重要と判断されたものは「重要無形文化財」として、文部科学大臣がその技術の保持者、または団体を指定、保護しています。
映画・レコード・採譜等の記録作成と伝承者の養成、また工芸作品の買上げなどの取り組みも「無形文化財」保護の活動の一環として実施されています。
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人間国宝
前述の「重要無形文化財」に指定された「技」を高度に体得・体現している人物のことです。「人間国宝」として認定されると「技」の維持や後継者育成といった重要無形文化財保護のための活動費として、年間200万円の助成を受けることができます。
また、工芸品の分野で「人間国宝」の認定を受けると、作品にブランド的な価値がついて売買価格が高くなります。
2019年6月現在の「人間国宝」認定者は109名、認定団体は30団体と発表されています。いかに希少な存在かがわかりますよね。
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民俗文化財
文化財保護法によって規定され、「無形民族文化財」と「有形民族文化財」に分けられます。
無形民族文化財は、衣食住・生業・信仰・年中行事等に関する風俗慣習や民俗芸能。
有形民俗文化財は、風俗慣習や民族芸能に用いられる衣服・器具・家屋など。
両方とも、国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないものです。
また、有形民俗文化財のうち、形様・製作技法・用法等で国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なものは、「重要民俗文化財」として指定されます。
民俗文化財もまた、国民生活の推移を理解するためには欠くことのできないものです。
記念物
記念物は文化財の分類の一つで、次の三つに大別されます。
●貝塚・古墳・都城跡・城跡・旧宅等の遺跡で、国にとって歴史上または学術上価値の高いもの
●庭園・橋梁(きょうりょう)・峡谷・海浜・山岳その他の名勝地で、国にとって芸術上または鑑賞上価値の高いもの
●動物(生息地、繁殖地および渡来地を含む)・植物(自生地を含む)および地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む)で、国にとって学術上価値の高いもの
以上のようなもの中でも特に重要とみなされるなものについては、国が文化財保護法に基づいて、それぞれ史跡・名勝・天然記念物(その中でもさらに重要度の高いものは特別史跡、特別名勝、特別天然記念物)に指定して保護を図っています。
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埋蔵文化財
土地に埋蔵されている有形文化財のことで、考古学における遺物、遺構の多くはこれに該当します。
発掘にあたっては、調査あるいは土木工事その他の目的いかんにかかわらず、文化庁長官に届け出が必要とされていて、長官は発掘に関し必要な指示を与えたり、また禁止を命ずることができます。
埋蔵文化財は、地下・水底・海底(領海内に限る)など、土地の上下を問わず人目に触れない状態において所在している遺跡や、さらにそこから発掘によって出土した遺物の両方の意味で用いられています。
日本全国どんな小さな町や村へ行っても、1つや2つの埋蔵金伝説を聞くことができると言われているので、「子供のころに聞いたことがある」と言う方も多いのではないでしょうか。
では、実際に埋蔵金などのお宝を発見した暁には、発掘した遺物は発掘者のものになるのでしょうか。
埋蔵文化財は、所有者が判明しないときは国庫に帰属し、発見者や土地の所有者には報償金が支給されます。埋蔵金発掘を夢見ている方は、心に留めておいてください。
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文化的景観
現行の文化財保護法では、「地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で、その地で暮らす人々の生活又は生業の理解のために欠くことのできないもの」と定義付けられています。
文化的景観は、日々の生活に根ざした身近な景観なので、その価値をうっかり見逃してしまいがちな為、保護する制度を設けることで、文化的な価値が正当に評価され地域で保護していくことの大切さを再認識できます。
文化的景観の中でも特に重要と判断されたものは、都道府県又は市町村の申出に基づいて、「重要文化的景観」として選定されます。
重要文化的景観として選ばれると、現状を変更したり、その保存状態に影響を及ぼすような事業を行う場合には、文化庁長官への届け出が義務付けられています。
文化的景観の保存活用のために行われる、調査事業や保存計画策定事業、整備事業、普及・啓発事業については、国からその経費の補助が行われます。
平成31年2月26日現在で、全国で64件の重要文化的景観が選定されています。
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伝統的建造物群
周囲の環境とともに歴史的風致を形成している建造物群で価値の高いもののことです。具体的には、城下町・宿場町・門前町など、全国各地に残存する歴史的な建造物群を指します。
市町村は「伝統的建造物群保存地区」を決定し、地区内の保存事業を計画的に進めるため、保存条例に基づいた保存計画を定めます。文化庁や都道府県教育委員会は、市町村の定めた保存計画に対して指導や助言を行います。
また、市町村が行う修理・修景事業、防災設備の設置事業、案内板の設置事業等に対する補助、さらには税制優遇措置を設ける等の支援も行っています。
「伝統的建造物群」の中でも、国がその存在価値を高く評価したものが「重要伝統的建造物群保存地区」として選定されます。
平成30年8月17日現在、重要伝統的建造物群保存地区は、98市町村で118地区あり、約28,000件の伝統的建造物及び環境物件が特定され保護されています。
まとめ
有形文化財の中で特に重要なものとして国が指定したものを「重要文化財」と、重要文化財の中でも特に文化史的・学術的価値の高く国が指定したものを「国宝」として登録されるんですね。
また、法隆寺の火災で、法隆寺金堂壁画が焼損してしまったことを機に、文化財保護法が制定され、文化財の保存や活用、文化的向上、進歩に貢献する目的で、文化財保護法が制定され、今日までさらに未来へと保護されていくんですね。
文化財には様々ありますが、身近なところにある文化財を探してみるのはいかがでしょうか。