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【日本舞踊】立廻りにとんぼ返り!コミカルありの演目あらすじ解説[将門・近江のお兼・雷船頭]

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将門

[ロマンホラー系]


正式な演目名は「忍夜恋曲者しのびよるこいはくせもの」。思わせぶりな題名ですね。妖しくも美しく、不思議な舞踊です。

登場するのは、勇猛な武将と、傾城けいせい(遊女)に化けている美姫。

武将の名は大宅光圀おおやのみつくに
平安朝の武士で、討ち死にした平将門の残党狩りを命じられています。

姫の名は滝夜叉姫たきやしゃひめ
平将門の娘にして蝦蟇がまの妖術使いです。

この二人は敵同士なのです。

場面は、将門の拠点であった古御所。

大宅光圀は、ここに不穏な動きがあるらしいというので、探りに来ているのです。

光圀がうたた寝をしていると、傾城の姿をした滝夜叉姫が現れます。

京の遊郭で彼を見初め追いかけてきたのだと言って、光圀を口説き始めます。将門派再興のために、色仕掛けで光圀を味方に引き込もうと企てているのです。

光圀は薄々正体を見破っているのか、わざと将門討ち取りの武勇伝を語って聞かせます。滝夜叉姫は、父親の最期の話に涙します。そして、その涙の理由をごまかすために、郭での恋の切なさを切々と語ります。男女の恋模様の所作の場面です。

しかし、滝夜叉姫は平氏の赤旗を取り落としてしまい、本性がばれます。

光圀は自分になびかないとみて、妖術で襲い始めます。姫の操る蝦蟇がまも登場し、激しい立廻りのうちに、最期は両者が見得を切って終わります。

バトルとロマンス、勇者と妖姫、美女と蝦蟇、そんな真逆の要素が交錯し、独特の妖艶さを醸し出す舞踊です。


近江のお兼

[カントリー系]


お兼は、琵琶湖畔の近江にいたと伝えられる女性です。

男勝りの怪力の持ち主で、暴れ馬の手綱を踏み抑えたのだとか。元ネタの古今著聞集によると遊女という設定ですが、日本舞踊では、幼さも残る素朴な田舎娘の面も出して演じられます。

この演目自体は、近江八景を称える八変化舞踊(8曲セット)の一部で、全体には、「閏茲姿八景またここにすがたはっけい」という難しい漢字の名前がついています。

出だしでは、近江名産の近江晒を手にしたお兼が、高下駄をカッカと踏み鳴らして、颯爽と登場。

漁師村の若い衆相手に立廻りをみせます。
男達がトンボをきったり、アクラバティックなアクションでお兼に絡みます。

腕自慢のお兼は、気風よくあしらっていますが、それでいて可愛らしい娘なのです。その辺の男が束になっても敵わない大力を持っていますが、だからと言って、決して牝牛のような女ではありません。
初々しい娘の風情です。

恋の唄でしっとり踊ったり、盆踊りのような田舎の風俗の楽しい踊りになったり、琵琶湖の美しさを語ったのち、クライマックスへ。持っていた近江晒の長い布を、ダイナミックに振り廻しながら踊るところで幕となります。

琵琶湖畔を舞台にした、おおらかで明るい踊りです。




雷船頭

[コミカルクール系]


コミカル系の代表ともいえる踊りです。

なんと、雷様が空から落ちてきて、船頭と絡む軽妙な踊りです。

この雷様は全然怖くなく、憎めなくて可愛いキャラです。遊び心たっぷりの演目なのです。いかにも江戸っぽく粋で、季節感も楽しめます。

舞台は夏の大川(隅田川)の夕立どき。

船頭が一休みしています。そこへ、ゴロゴロと雷太鼓の音。そして、雷様が降ってきて船頭に会うのです。

大川の船頭と言えば、いなせでクールな存在です。それに対して、この雷様は野暮ったく、少々情けないのです。

そして、この船頭ですが、実は、若い男前の船頭と、色っぽいやや年増の女船頭との二つバージョンがあるのです。(写真は「女船頭」の方です。)男っぽい柄の質素な着物に、髪は無造作なじれった結び(ダウンヘア)。とても地味です。
でもそれがとても江戸っぽく、男勝りながらも色気たっぷり。雷様も美しい女船頭に魅かれてしまったのです。

女船頭はいける口とみえて手酌で酒を飲み始め始めますが、それを雷様は横取りしたり、やり込められたり。そんなやり取りが続きます。

もっさりした雷様と粋で美しい女船頭。どうみてもお似合いではなく、そこもおかしいところです。洒脱で楽しい演目です。



[写真・動画 協力]

日本舞踊 創作邦舞 若月流

1986年に創流された日本舞踊「若月流」は、日本舞踊の古き良き伝統を守りながら時代が求める新しい舞踊を創作しています。

各箇所で伝統芸能の披露や千葉県柏市を中心に新宿御苑前、流山市、船橋市、東京都江戸川、茨城県八千代町、桜川市、埼玉県上尾市、秋田県大仙市の教室にて、お若い方からご年配の方まで踊って楽しんで頂けるお稽古を致しております。

若月舞踊学院 >> https://buyougakuin.com

PHOTO:第18回 若仙會 於 日本橋劇場


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まとめ

ロマンホラー系の「将門」。カントリー系の「近江のお兼」。コミカルクール系の「雷船頭」。

江戸人の描いた「いい女」キャラに様々な演出がある演目です。

舞踊会ではよく行われる人気の演目ですので、是非、観くらべてみてください。


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ライター紹介 ライター一覧

ゆっこ

ゆっこ

京都の町屋に住むおばあちゃんっ子だった頃から、和の物が大好きでした。炬燵に当たりながらテレビで歌舞伎中継を一緒にみて、祖父母のコメンタリーを聞いておりました。

舞妓さん達に憧れながらも、大きくなってからは所謂リケジョ。理工系大学院に進み、研究室に夜中まで籠りっきりの生活でした。なかなかお洒落とは無縁でしたが、きれいなお着物は大好き。

お茶を習いだすと次第に手持ちの着物が増えていき、やがて日本舞踊にはまって名取になり、人様に「日本の伝統文化っていいんだよー」と紹介できる機会にも少しずつ恵まれてきました。

昔は、大都市の下町の女の子達が自然に日本舞踊のお稽古に通っていたそうです。今のピアノ人口よりも多かったかもと聞きました。多くの人が気軽に伝統文化に親しめるといいな、と思っています。

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