【お米】気候や風土によって異なる品種。性質の違いあり! 代表的な5品種の特徴や命名の由来を紹介
お米の歴史
主に日本で食べられているジャポニカ米は、中国の長江中下流域を原産として、縄文時代に日本に伝わったと考えられています。
福岡県の板付遺跡や佐賀県の菜畑遺跡で、土器に付着した籾の痕跡や石包丁などの農業用具が発見されたことにより、約3000年前には稲作が行われていたことが分かっています。日本の高温多湿な気候は米の栽培に適しており、弥生時代前期には青森県でも稲作が行われていました。
稲作の普及とともに集団での定住生活が一般化し、長期間の保存が可能であった米をたくさん所有する人物が権力を握る構造が出来上がります。ムラからクニへと中央集権的な国家が形成され、米が税金のように納められるようになります。すると、さらに米の生産性を高めるために、農具の改良や新田開発、寒さに強い品種への改良などが積極的に行われるようなります。
明治時代までの品種改良は、ごく稀に生まれた優れた個体を選別して何世代も育成することで、新たな品種が定着するという非常に時間がかかるものでした。1903(明治36)年に人工交配によって異なる特徴を持つ品種同士を掛け合わせる方法が確立されると、目的に合ったお米を比較的短期間で開発することができ、コシヒカリなど質の良い品種が誕生しました。
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代表的なお米の銘柄
現在日本で生産されているお米の品種は300種類以上あり、気候や風土の違いによって栽培される品種が異なります。
例えば北海道や東北では耐冷性が重視されるのに対し、九州では反対に耐暑性が必要となります。それぞれの地域で栽培条件が異なるため、気候への適応力や食味をはじめ様々な性質を持った品種が各地で開発されています。
そのため、品種によって甘味や粘り気などの性質の違いがあり消費者が購入するときの参考にもなるので、以下に代表的な5種類のブランド米を紹介します。
コシヒカリ
昭和54年から作付面積のトップを守り続けている日本を代表するブランド米で、新潟県を中心に幅広い地域で作られています。
古代に「越国(こしのくに)」とよばれていた新潟県(越後)、富山県(越中)、福井県(越前)が光り輝くようにという意味を込めて命名されました。
新潟県魚沼産のコシヒカリは特に有名で、うま味の強さ、粘り気、艶のある見た目を備えた最高級のお米です。
アミロースとアミノペクチンというデンプンのバランスが非常に良く、お米の強い旨味を感じることができるので、味の濃いおかずと一緒に食べても負けない存在感を持った日本人好みのお米です。
ひとめぼれ
2021(令和3)年時点において日本で2番目に作付面積が多い銘柄です。1981(昭和56)年にコシヒカリと初星(はつぼし)を掛け合わせて誕生したお米で、耐冷性があり比較的育てやすい品種とされています。
宮城県をはじめとする東北地方を中心に栽培され、一目ぼれするような美しさと美味しさを兼ね備えていることから命名されました。
ひとめぼれはコシヒカリと比べて少し大粒で、適度な粘りとサッパリとした口あたりが特徴です。和食だけではなく、洋食や中華などさまざまな料理に合うオールマイティな品種として飲食店でもよく使用されています。
ゆめぴりか
現在、新潟県と一二を争うほどの米の産地となっている北海道を中心に栽培されている銘柄です。もともと北海道は寒冷な気候で稲作には不向きだったのですが、耐冷性に優れた美味しいお米として誕生したのが「ゆめぴりか」です。
アイヌ語で美しいを意味する「ピリカ」をもとに命名され、2021(令和3)年度まで12年連続で食味ランキングで最高位の特Aを受賞しています。
アミロースが低く、ほど良い粘り気と柔らかい食感を持ち、しっかりとした甘味を感じることができることが、ゆめぴりかの特徴となっています。
あきたこまち
コシヒカリを栽培することができなかった秋田県で、気候や土壌に合う品種として選ばれた品種があきたこまちです。1984(昭和59)年に誕生したあきたこまちは、病気に強く稲が倒れにくい性質を持っており、現在は秋田県だけではなく全国各地で栽培されています。
絶世の美女として知られる小野小町の出生地という伝承にちなみ、時代を超えて愛されるお米を目指して命名されました。
お米の粒は小ぶりで、水分量が多く比較的もっちりとした食感が特徴です。
ヒノヒカリ
九州を中心に西日本で多く栽培されているヒノヒカリは、黄金晴(こがねばれ)とコシヒカリを掛け合わせて誕生した銘柄です。
コシヒカリのような美味しいお米を目指し、九州地方を意味するヒ(陽)とお米が光り輝くことから命名されています。比較的暑い地域でも栽培することができるヒノヒカリは、安定的な品質を保ちやすい銘柄だとされています。
粒の大きさはやや小さめでしっかりとした歯ごたえがあり、スッキリとした癖のない味わいが特徴です。比較的手ごろな値段で販売され、冷めても味や食感が損なわれづらいためお弁当にも適したお米です。
おわりに
お米は食糧としてだけではなく経済や文化の側面からも、日本人に大きな影響を与えてきました。
江戸時代にはお米が経済の中心であり、米の収穫量を示す石高によって大名の力を表わしていました。また、味噌や酢などの調味料、そして日本酒の生産にもお米は欠かせません。普段何気なく食べているご飯も、先人たちの知恵によって生み出されていることに改めて思い知らされます。
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