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【雑煮】お正月の定番!各地域に根付く雑煮の歴史と代表的な味を紹介

 2023/12/26 食物 習慣
 
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雑煮の歴史について

雑煮というのは、様々な具材を一緒に煮るという意味の「烹雑(ほうぞう)」や「煮雑(にまぜ)」が語源になっていると考えられています。

雑煮の起源については諸説あり、明確なことは分かっていませんが、貴族社会や武家社会の食文化に影響を受けながら、少しずつ日本各地に定着していったようです。平安時代に貴族の歯固めの儀式として登場し、室町時代になると武士が酒宴の際に食べる縁起の良い料理として広まっていきました。正月料理の定番となったのは江戸時代からで、庶民にまで広がったのもこの頃だと考えられています。

正月にやってくる「年神様(としがみさま)」を迎え、神棚や床の間に供えた餅を食べることで、その恩恵を授かる神人共食(しんじんきょうしょく)」の風習と結びつきました。日本では古来より、神様のお下がりを食べることで人間と神様との一体感を高めるという信仰を持っていました。その名残として、現在でも雑煮を食べるときに両端が細長くなっている「祝い箸」を使う地域があります。これは一方を年神様が使い、もう一方を人間が使うために細くなっており、神様と食事を共にするという意味が込められています。


地域ごとの雑煮の種類について

雑煮は地域によって違いがあり、なかでも餅の形と汁の味付けに特徴が表れることが多いです。個々の家庭や年代によっても食べられる雑煮の種類は異なってきますが、各地域のおおまかな傾向を紹介していきます。


関東

餅の形:角餅 汁の味付け:すまし汁

東京を中心とする関東一帯では、醤油ベースのすまし汁に焼いた角餅を入れるのが一般的です。江戸時代初期には関西同様の味噌仕立ての雑煮が食べられていたようですが、千葉県の銚子や野田で醤油づくりが盛んになると、江戸っ子に好まれる濃口醤油の味付けに変化していきます。

餅の形も当初は関西と同じく丸形でしたが、しだいに四角い形へと変わっていきます。これは、ついた餅を板状に伸ばしたものを「のし餅」と呼ぶことから、敵をのす(討ちのめす)という意味につながり縁起が良かったという説やのし餅を包丁で切り分けた角餅のほうが効率的に生産できたという説があります。人口の集中した江戸では手でひとつずつ丸めて作るよりも、一度に切り分けてしまったほうが短い時間で大量に生産ができるという利点があります。

また、雑煮に入れる具材の特徴として、しいたけ、小松菜、にんじん、三つ葉などの野菜に加えて、鶏肉が入っていることも多いです。


関西

餅の形:丸餅 汁の味付け:味噌仕立て

大阪や京都を中心に関西地方では、丸餅を使った白味噌仕立ての雑煮が一般的です。もともと雑煮を食べる文化は京都が発祥で、古くから手で丸く形を整えた餅が食べられてきたことが影響しています。鏡餅をはじめとする丸型は、古来より円満を意味する神聖な形だとされ、神人共食の習俗が合わさってこの形になったと考えられています。

また、米麹を多く使った白味噌仕立ての雑煮は、塩分が少なく甘みが強いという特徴があります。甘みの乏しかった時代に米を贅沢に使った白味噌は貴族に好まれ、京都では伝統的に甘みのある白味噌を使った料理がたくさんあります。

さらに、代表的な具材として里芋や大根、金時にんじんなどがあり、おせちのように子孫繁栄や長寿、魔除けといった意味が込められています。


山陰

餅の形:丸餅 汁の味付け:小豆汁

山陰地方の出雲市や鳥取市などでは、小豆がたっぷり入った汁のなかに丸餅を入れた雑煮が食べられています。家庭によっては甘さを控えた味付けもありますが、ぜんざいのような甘さの強い小豆雑煮が多く作られています。

祝いの日に赤飯を食べることからも分かるように、もともと小豆は邪気を払う縁起の良い食べものと考えられていました。旧暦10月は神様が出雲大社に集まることから出雲地方だけは「神在月(かみありづき)」と呼ばれ、その間に神様に振る舞われた「神在餅(じんざいもち)」が現在のぜんざいの起源だという説もあります。


香川

餅の形:丸餅(あんこ入り) 汁の味付け:味噌仕立て

香川県東部を中心に食べられている雑煮が、味噌仕立ての汁にあんこ入りの餅を入れたあんもち雑煮です。和三盆の産地として有名な香川県では、貴重だった砂糖を正月料理として雑煮のあんこに取り入れるようになったことが始まりだと考えられています。

味付けはイリコのだし汁と白味噌で仕立てた関西風で、具材は大根、にんじん、里芋などが使用されます。西日本では煮干しのことをイリコと呼ぶことが多く、特に瀬戸内海で収穫されるイリコは濃厚でうま味の強い出汁が取れるとされています。香川県では讃岐うどんをはじめ多くの料理にイリコ出汁が使われており、地域の特色が非常によく表れた料理があんもち雑煮となります。


おわりに

正月に食べる雑煮には、その地域ならではの特徴があり、食文化の多様性を垣間見ることができます。

今回紹介した雑煮以外にも、白味噌仕立ての関西風の雑煮にきな粉をつけて餅を食べる奈良県の「きな粉雑煮」やあご(干しトビウオ)から取った出汁にブリ、かつお菜(高菜の仲間で茎の部分にカツオ節のような風味がある野菜)を入れた福岡県の「博多雑煮」など特色ある雑煮が全国各地に存在します。

これを機会にみなさんの住む地域の雑煮を改めて調べてみるのも面白いかもしれません。


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島塚 啓

島塚 啓

昔から歴史や文学などの日本文化が好きで、大学では学芸員免許を取得しました。
今でも茶道や美術鑑賞など五感を満たしてくれる体験を求めて、日々情報収集に余念がありません。頭のなかをいっぱいにした後は思いっきって一歩踏み出してみましょう!感動的な出会いはいつも僕たちを待ち構えているはずです……。

一生のうちで好きなことに費やせる時間は、ほんのわずかしかありません。そんな貴重な時間を大切に過ごすために、みなさまが日本文化に触れる一助になれるような記事が書ければいいと思っています。

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