【漬物】古くから保存性を高めた貯蔵食品!漬物の歴史に様々ある漬物の種類
漬物とは
「漬物(つけもの)」とは何か? その定義を調べてみると、「主に野菜などの農産物を塩、酢、味噌、麹などを使って漬け込み、熟成させるなどして保存性を高めた貯蔵食品で、調理せずにそのまま食べられるもの」とされています。
漬物はぬか漬けなどのように「発酵食品」と思われがちですが、発酵させて作るものもあれば、塩分濃度を高めて保存性を高める「塩漬け」や、酢によって雑菌の繁殖を抑える「酢漬け」など、幅広い種類があります。
漬物の種類は、漬ける時に使う副材料「塩」「糠」「粕(酒粕・みりん粕)」「酢」「味噌」「醤油」「からし」「もろみ」などによる漬け床、漬け液による分類が一般的です。さらに味の変化が「発酵」によるものか、「調味」によるものかという分類や、貯蔵の長さによる「一夜漬け」「保存漬け」「古漬け」という分類方法もあります。
世界各国をみても発酵させたキムチ(韓国)やザワークラウト(ドイツ)、塩漬けのザーサイ(中国)、酢漬けのピクルス(アメリカ)など、多種多様な漬物があります。
漬物市場を世界全体でみると、2015年で110億ドル(約12兆円!)以上あると言われており、その1/4を日本が占めています。次いでアメリカ、メキシコ、ブラジル、ドイツが続きますが、やはり日本は世界に誇る漬物大国なのです。
漬物の歴史
日本食の基本では、ご飯と漬物はなくてはならないものです。歴史を振り返ると、今でこそ豊かな時代になり「一汁三菜」が主流ですが、昔はおもてなしの席以外の日常食は、長い間「一汁一菜」が基本でした。ご飯を主食に、汁物と漬物というのが日本人の食の原点なのです。
さらに古い時代へ歴史を遡ると、漬物は今から2000年も昔の大和時代に、すでに食品の保存として塩漬けが行なわれていた事がわかっています。記録としては天平年間(729~749年)に、瓜や青菜などの塩漬けについて記載されたものが残っており、この頃には宗教上の理由もあって、僧侶は瓜やナス、桃などの野菜や果実を塩漬けして食べていたようです。
奈良時代には大陸からの文化が入り、酒や味噌などの調味料が醸造されるようになり、漬物も多様に進化します。
平安時代には、漬物は副食として扱われるようになり、四季折々の食材を食するようになっていきます。春にはワラビ、フキ、瓜などを塩漬けにし、秋にはナス、生姜、柿、梨などを塩や酒粕、もろみや味噌などに漬けていたことが記されています。
鎌倉時代から室町時代には、茶の湯の発達とともに懐石料理が確立され、旬の漬物を賞味するようになりました。
漬物は香の物(こうのもの)と呼ばれ、食事の中で味覚や嗅覚を一新する効果も期待され、重要な意味を持つようになります。これは平安時代の貴族の遊び「聞香(もんこう)」がルーツにあり、後に天然香木の香りを楽しむ「香道(こうどう)」として進化する中で生まれました。多くの香りを聞いていると、鼻が麻痺して香りがわからなくなることから、途中で香の物を食べ、鼻をリセットするようになりました。香りを聞くためには、なくてはならないのが香の物(漬物)だったのです。
そして江戸時代には、今日の漬物がほとんど出揃います。
たくあん漬、べったら漬、三五八漬、野沢菜漬、奈良漬、ぬか漬など、日本全国各地で、その土地に根ざした様々な漬物が発達し、庶民の食生活に広く定着していきました。
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漬物の種類
浅漬け
[あさづけ]
浅漬けは、香の物(こうのもの)、お新香(おしんこう)、お香香(おこうこう)、香香(こうこう)とも呼ばれ、発酵させずに、主に塩や麹などで浅く漬けたものを指します。茶の湯の懐石で香の物と呼ばれるのは、この浅漬けを主に指しています。白菜やきゅうり、ナスなど季節の野菜を漬けたものや、一夜漬けも含まれます。
塩漬け
[しおづけ]
塩漬けは、漬物として最も基礎的なもので、ナスやしょうが、シソを刻んで漬けた「柴漬(しばづけ)」や、「梅干し」などが代表的なものです。長野県名産の「野沢菜漬け」、福岡県名産の「高菜漬け」、京都名産の聖護院かぶらを薄く輪切りにして昆布と漬けた「千枚漬け」や、塩漬けして乳酸発酵させた酢茎(すぐき)の「すぐき漬け」なども有名です。
醤油漬け
[しょうゆづけ]
醤油漬けは大根やきゅうり、ごぼうやニンニクなどを醤油に漬け込んだものや、刻んだ野菜を組み合わせて作る「福神漬(ふくじんづけ)」も醤油漬の一種です。北海道名産の「松前漬け」も、刻んだ昆布とするめ、ニンジンに数の子を加えて醤油に漬け込んだ醤油漬けです。
味噌漬け
[みそづけ]
味噌漬けは「山菜漬け」や「ごぼうの味噌漬け」が代表的です。アクが強くてクセのあるものが味噌と相性が良いのでしょう。味噌の香りや風味をしっかり移すとともに、塩分濃度が高いので長期保存が利くというメリットがあります。
糠漬け
[ぬかづけ]
糠漬けは米ぬかを発酵させて作ったぬか床に、様々な野菜を漬け込むもので、ぬか味噌漬けとも呼ばれます。「たくあん」は、干したり、塩漬けした後にぬかに漬けて作るため、糠漬けのカテゴリーに入ります。秋田県名産の燻した大根で作る「いぶりがっこ」も糠漬けです。毎日かき混ぜて作るぬか床は、乳酸菌が豊富で、その家庭ごとに味が異なるという魅力があります。
麹漬け
[こうじづけ]
麹漬けは米麹(こめこうじ)に漬けるもので、代表格は東京名産の「べったら漬け」です。福島県などの東北地方では「三五八漬け(さごはちづけ)」があり、塩、米麹、米をそれぞれ3:5:8の割合で混ぜたものを漬け床にします。石川・富山県名産の「かぶらずし」は、カブの輪切りにブリを挟んで麹に漬け込んだ、非常に贅沢な城下町らしい漬物です。
粕漬け
[かすづけ]
粕漬けは酒粕(さけかす)や味醂粕(みりんかす)に漬けたもので、野菜の粕漬けや、静岡県名産の「わさび漬け」、奈良県の「奈良漬け」などが有名です。長期保存用として、素材そのものの風味よりも、副材料の風味を素材に移し、長期保存に適しています。
酢漬け
[すづけ]
酢漬けは、らっきょうの酢漬けやショウガを漬けた新生姜漬け、ガリなどが定番です。世界各国で親しまれているピクルスも酢漬けです。調味液の味そのものを素材に移し、薬味のように楽しむものが多くあります。
これらの他に、栃木県名産のたまりに漬ける「たまり漬け」や、山形県名産の小ナスを和がらしに漬ける「からし漬け」などもあります。
まとめ
本来は保存食だった漬物ですが、冷蔵庫の普及と保存技術の進化によって、今は長期保存の目的は薄れつつあります。また多様な食文化の広がりによって、嗜好も変化し、食生活に定着していきました。
ぜひこの機会に、その地域ならではの味わいを楽しんでみてください。
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