【日本舞踊】名取になると何が変わる?芸名に名入りグッズに新たな自覚
名取って何?
「名取」は、日本舞踊独自のものではなく、小唄、長唄など音曲の芸事でも使われている呼称です。
名取になるということは、それぞれの流派である一定の技能を修めたと認められ、流派の名を冠する芸名を名乗ることが許されることを意味します。
日本舞踊の場合、名取になる条件や、名取になって許される活動の範囲は各流派によって違いますが、共通するのは、流派の名を使って人前で踊りを披露できるということです。
名取=お師匠さん?
「名取になるということは、お師匠さんになること」というイメージが持たれているところがあります。
確かに、師匠の代稽古をしたり、自分の弟子をとることができる流派もありますが、ほとんどの流派では、自分の名前(芸名)の看板を揚げて教室をひらくには、名取になってから更に師範の資格を取らなければいけません。
しかし、いずれにしろ、名取になるということは、流派の踊り手として認められたということで、プロの舞踊家を目指す人にとっては大事な第一歩ですし、趣味でお稽古する人も「特技は日本舞踊です」と言える大きな区切りでしょう。
名取になるには
多くの流派では、流派の本部で、名取になるための試験を受けます。
試験の難易度や受験の年齢制限など、処々の基準は流派によって変わります。また一方、特に試験はなく、自分の師匠の判断で決まる流派もあるようです。しかし、試験のあるなしに関わらず、家元の許可が不可欠です。
許可が下りれば、名取儀式に臨みます。
同時期に名取になる他の新名取数人と一緒の事が多いでしょう。
家元からお免状をいただき、師匠と家元(家元が直接の師である場合もあります)と、固めの杯事などを行います。流派の踊り手の一員になったのだという新たな自覚を持って、更に芸道に励むことになります。
晴れて芸名を名乗る
名取式の時から、家元から許された芸名で呼んでもらえます。
流派名が苗字になりますが、下の名前をどうするかが問題ですね。
家元や、舞踊家の家系の後継者など、受け継ぐ名前が決まっている場合もありますが、多くの人は師匠につけてもらったり、師匠と相談して流派内に重複する名前がないか確認しながら決めます。
芸名はキラキラネーム?
こうして決められた芸名が曲者で、舞踊会の番組(プログラム)をみると、変換間違いか見まがう漢字の組み合わせが並んでいたりします。
花鳥風月の言葉をそのまま名前にしたり、語呂のいい言葉に当て字をすることもありますが、多いのは、師匠の名前の一部をもらって、そこに本名の一部や、思い入れのある字をもってきて組み合わせるやり方です。
漢字数個の謎の組み合わせができてしまい、「これ、どう読むのでしょう」ということも多々ありです。昨今は下火になってきたと言われる、キラキラネームも顔負けかもしれません。また、女性が、男性っぽい名前や漢字を受け継ぐこともあります。「○○ひこ」「○○すけ」というような名前の女性舞踊家がいたり、名前だけでは性別不詳なのです。
名取りになって揃えるもの
名取となってからの初めての舞台が、「名取披露」となります。
師匠の会であれば、口上などが述べられることもありますが、舞台では特にアナウンスはなく、楽屋で皆さんに個々にご挨拶するだけのこともあります。
御挨拶の定番は、何といっても、名入り手拭。ほとんどの新名取が、芸名をいただいたら自分の芸名を入れた手ぬぐいを大量に染めてもらってお配りします。
名取になるのは何かともの入りですが、マイ手拭のデザインを選ぶのは、楽しいものです。出来上がった手拭が、これまた名前入りの熨斗に包まれて重ねられているのをみると、テンションがあがります。
その他、芸名入りグッズとしては、楽屋草履に名前を入れてもらったり、名入りの袱紗や風呂敷を用意するのもありです。また、着物などに、名取以上にだけに許されている流派の紋を入れます。
わつなぎ関連記事 >>【日本舞踊】日本舞踊を知る!有名5大流派の特徴や成り立ち
まとめ
名取になるということは、所属する流派の舞踊家として活動するための大事なプロセスです。
一方、金銭的に大変な負担でもあります。
名取になるかならないかは、何の目的で日本舞踊を続けていくかで判断するべきことかもしれません。名取にはならず、楽しみながらお稽古を続けていきたい方もいらっしゃるでしょう。
また、歴史に残る名舞踊家の中には、どこの流派にも属さず、家元制度や名取制度とも無関係に活躍した人もいます。もちろん、それは突出した実力を備えた人のことで、誰もがそうできるわけではありませんし、流派の制度が芸の継承に貢献した面はもちろん大きいです。
無理をせずに芸事を楽しむ選択肢も必要なことかもしれませんね。
わつなぎ関連記事 >>【日本舞踊】絶対観ておきたい!初心者でも楽しめる人気の名作[厳選6演目]