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【日本舞踊】絶対観ておきたい!初心者でも楽しめる人気の名作[厳選6演目]

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[キレイ系]藤娘

[ふじむすめ]

黒い大きな塗り笠、藤の柄の振袖にだらりの帯、大きな藤の枝をかついだ娘姿は、「キレイ系」としてのインパクト抜群。

巨大な松の木からたくさんの藤の花房がカーテンのように垂れ下がり、大変美しい舞台です。

この演出は、歌舞伎役者で伝説的な踊りの名手の六代目菊五郎が始めました。
大柄な体格の菊五郎が、自分を愛らしい娘に見せるために、松の木や藤の花を大きくすることで目の錯覚を狙ったのです。元々「藤娘」は、人気風俗画に描かれたお洒落な女性を風刺した踊りでしたが、菊五郎が「藤の花の妖精」という解釈に変えました。

見どころの一つに、「お酒を飲んでほろ酔い加減になる」趣向の振付がありますが、これは、「藤に木の根元にお酒をかけると花が長持ちする」という言い伝えを踏襲したものです。なお、菊五郎以前の古風なスタイルの藤娘が上演されることもあり、見比べるるのも一興でしょう。


[キレイ系]京鹿子娘道成寺

[きょうがのこむすめどうじょうじ]

歌舞伎舞踊の集大成とも言われる演目です。

赤い振袖に金烏帽子姿で現れ、その後、早変わりで何度も衣装が変わります。
舞台には、桜が満開の山々と道成寺。目にも鮮やかな爛漫の春です。

この舞踊は、能の人気演目「道成寺」を歌舞伎の世界に映したもので、紀州の道成寺に伝わる「清姫伝説」を元にしています。

「清姫伝説」とは、恋の妄執に狂った娘が大蛇と化して、道成寺に逃げ込んで鐘に隠れた男を焼き殺してしまうおどろおどろしい話ですが、能や歌舞伎の「道成寺」は、この娘の亡霊が、恋人殺人現場の道成寺に戻ってきた設定です。能では、恋の恐ろしさと哀れさが舞台に昇華されています。
それに対し、歌舞伎舞踊では、妄執の表現ばかりではなく、むしろ、亡霊となった美しい娘にかこつけて、絢爛な春を楽しむ一面があります。

踊り手には高い技術と精神性が要求されますが、その一方、衣装や大道具が大変豪華で、お坊さん役エキストラが何人も登場し、最も大がかりで華やかな舞踊演目と言えるでしょう。


[キレイ系]鷺娘

[さぎむすめ]

寂しい冬の水辺。いかにも悲壮感漂う舞台です。

暗い照明の中、白無垢姿の娘が登場。
白鷺の精が人間に恋をして、人間の娘に化けて男に近づいたのですが成就せず、悲しく雪の水辺を彷徨っています。
この娘姿の鷺はこの世のものなのか、すでに亡霊となっているのか、解釈はいろいろです。

やがて、照明が急に明るくなり、早変わりで町娘の姿になって、恋の喜びや駆け引きの楽しさを踊るウキウキした場面になります。
恋の希望に満ちた日々の回想でしょうか。

しかし、最後は鷺の本性を表し、降りしきる雪の中で狂おしく踊ります。
鳥の身でありながら人間に恋してしまったので、地獄の責め苦を追っているのです。

終わり方には二通りあり、古風なのは、前を見据えて見得を切る終わり方。近代以降に始まったのは、雪の中で力尽きて倒れたまま幕になる終わり方です。
後者は、アンナ・パブロワのバレエ公演「瀕死の白鳥」にヒントを得たのだとか。どちらにしても、壮絶に美しいエンディングです。


[カッコいい系] 助六

[すけろく]

「キレイ系」で紹介した三つの演目は、洋舞で言うところの三大バレエ「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「眠れる森の美女」のようなものです。美しい娘姿のの名舞踊としてはずせません。

歌舞伎舞踊は、これらの演目のように、元々女形の見せ場として誕生しましたが、やがて男性の役の踊りも作られるようになりました。

その中で一番カッコいいのは文句なく助六でしょう。

お芝居としての人気演目を舞踊にしたもので、すっきりした着流しに紫の鉢巻きをして、蛇の目傘を手にした姿がとても粋です。

助六というのは、歌舞伎の世界では重要なキャラクターの曾我五郎の仮の姿で、喧嘩っ早くて腕が立つ、江戸歌舞伎を代表するダンディーです。

「助六」をみたあとは、曾我五郎が登場する別の舞踊も是非ご覧になってください。


[一挙両得系]春興鏡獅子

[しゅんきょうかがみじし]

前半は、大奥勤めの娘の踊り、後半は、勇壮な獅子の踊りとなります。
一人の踊り手が、まったく違うタイプの役柄を踊り分けるのを見られ大変楽しめる演目ですが、踊る側には技術のみならず相当な体力が要求されます。

前半の場面は、江戸城大奥。
御鏡餅曳きの日に、腰元の弥生が、上司達に強く所望されるまま、踊りを披露し始めます。
同じ娘の踊りでも、先に挙げた「キレイ系」とは一味違い、大奥らしい格調高さがあります。やがて、踊るうちに高揚してきた弥生が、小さな獅子頭を手にとると、不思議なことに獅子の魂が弥生にとりついてしまいます。
弥生は獅子頭に引かれるように踊りながらどこかへ行ってしまいます。

そこに二人の愛らしい蝶の精が現れ、続いて、獅子の精と化した弥生が現れます。

後半は、前半の美しい腰元姿とはうって変わって、隈取をし、長い獅子の毛を被った姿です。
獅子と蝶達は供に花と戯れ、最後は勇壮な獅子の気振りで幕となります。
この演目は能楽の「石橋」の流れをくみ、格調高くお目出度い曲なのですが、辻褄を合わせようとすると、わからなくなる展開です。

筋について深くは追求せず、娘と獅子の踊り分けの魅力や、祝儀性、曲の華やかさ、ビジュアルな美しさを楽しみましょう。


[お笑い系]鳥羽絵

[とばえ]

日本舞踊というと、白塗り化粧に綺麗な衣装で動く日本人形のような姿が思い浮かべられます。
しかし、日本舞踊の役柄は、美しい男女だけではないのです。

実は、ゆるキャラのような役もあります。
猫、ねずみ、犬、魚の着ぐるみを着た踊り手が、シナを作ったり見得をきったりして、人間役に絡みながら踊るのです。

「鳥羽絵」とは、平安時代の画家の鳥羽僧正が始めた戯画(つまり漫画)のジャンルで、この舞踊も一枚の鳥羽絵から題材をとったものです。

夜中、商家の台所で、寝間着姿の下男がネズミを捕まえようと奮闘しているのですが、このネズミが一筋縄ではいかず、下男はいいようにあしらわれます。

ネズミは、シナを作って下男に言い寄ってからかい、下男はタジタジ。愚弄されっぱなしです。
このネズミ役は、子供が踊ることもあります。

馬鹿々々しくも明るく愉快で、どこか可愛らしくもある踊りです。理屈抜きでお楽しみください。


まとめ

「これは絶対観ておきたい」という人気演目を厳選してみました。

日本舞踊は、踊り手の性別や年齢も様々。
男性役、女性役のどちらも、踊り手が男性であったり女性であったりします。高齢の舞踊家が若い役の踊りをしたり、歌舞伎役者や男性舞踊家が、仕草や姿勢によって艶やかな美女になりきったり、逆に、女性舞踊家が凛々しい男性になっているのをみられるのが、醍醐味でもあります。
また、目が肥えてくれば、歌舞伎役者と舞踊家の踊りの違いなどを比べてみるのも一興でしょう。

奥の深い日本舞踊の世界ですが、まずは、華やかな大道具や、豪華な衣装を纏った踊り手の姿の、日本的な美を楽しむところから始めて下さい。

「引き抜き」の手法を使った瞬時による早変わりなどにも、目を奪われます。そして、日本情緒に満ちた音楽は、最初は聞き慣れなくとも、耳になじむほど良さがわかってくるかと思います。

是非、舞踊会に足を運んでみて下さいね。


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ライター紹介 ライター一覧

ゆっこ

ゆっこ

京都の町屋に住むおばあちゃんっ子だった頃から、和の物が大好きでした。炬燵に当たりながらテレビで歌舞伎中継を一緒にみて、祖父母のコメンタリーを聞いておりました。

舞妓さん達に憧れながらも、大きくなってからは所謂リケジョ。理工系大学院に進み、研究室に夜中まで籠りっきりの生活でした。なかなかお洒落とは無縁でしたが、きれいなお着物は大好き。

お茶を習いだすと次第に手持ちの着物が増えていき、やがて日本舞踊にはまって名取になり、人様に「日本の伝統文化っていいんだよー」と紹介できる機会にも少しずつ恵まれてきました。

昔は、大都市の下町の女の子達が自然に日本舞踊のお稽古に通っていたそうです。今のピアノ人口よりも多かったかもと聞きました。多くの人が気軽に伝統文化に親しめるといいな、と思っています。

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