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古事記と日本書紀の違いがわかる! 日本の2大歴史書を学ぼう

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古事記

内容と目的

「古事記」は現存する日本最古の歴史書で、編纂されたのは712(和銅5)年のこと。歴史書と書きましたが、神々の誕生から日本列島の誕生、皇室の一族へと続く壮大な物語でもあります。

伊邪那岐尊(いざなぎのみこと)と、伊耶那美命(いざなみのみこと)の男女ペアの神が誕生し、この2人が大八洲(おおやしま)(現在の日本列島)を作ることから始まります。そして女神である伊耶那美命いざなみのみことが、天照大御神(あまてらすおおみかみ)と月読命(つくよみのみこと)、須佐之男命(すさのをのみこと)を産みます。他にも大勢の神を産んでいます。そして天照大御神あまてらすおおみかみが天を、月読命つくよみのみことが夜を、須佐之男命すさのをのみことが海を治めることになります。

物語は進んで、乱暴な弟・須佐之男命すさのをのみことに嫌気が差して天照大御神あまてらすおおみかみ天岩戸あまのいわとに引き篭もってしまったり。八つの頭を持つ八岐大蛇やまたのおろち須佐之男命すさのをのみことが退治し英雄になったりと、神々とはいえ波乱万丈なストーリーがてんこ盛りです。

「古事記」は天皇家の私的な本であり、日記や伝承記録のような位置付け。読みやすい和文体が使用され、エンタメ性がこれでもかというほど込められています。それぞれの物語に登場する神たちは人間味に溢れ、ドラマチックに描かれているのが特徴です。


特徴

編纂を命じたのは天武天皇(在位707~715)、在世中の712年に語り部である稗田阿礼(ひえだおあれ)から太安万侶(おおのやすまろ)が聞き完成したと伝わります。

当時天武天皇は壬申の乱に勝利し、律令制を整え、中央集権国家を完成させる途中でした。そこで国内の意識をより統一するために、大和朝廷の「帝紀」や「旧辞」をもとに歴史書を作ることにしたのが「古事記」のはじまりです。

上・中・下の全3巻で、神話の時代の上つ巻、初代神武天皇から第十五代応神天皇まで中つ巻、第十六代仁徳天皇から第三十三代推古天皇までの下つ巻となっています。

登場する和歌の数も多く全3巻中、112首もあります。後述する「日本書紀」では全30巻中、128首ほどなのでその多さが非常によくわかります。エピソードについても「古事記」には神話的な物語がふんだんに配置されています。「古事記」にしかない、または「日本書紀」にしかないエピソードがあり、下記は「古事記」のみのエピソードになります。

[大国主大神]

出雲神話における大国主大神(おおくにぬしのみこと)は須佐之男命すさのをのみことの子供で、天照大御神あまてらすおおみかみに国譲りをした神です。島根県・出雲大社の御祭神でもあり、縁結びの神様としても有名。兄たちからの試練を受けたり、彼が傷ついたうさぎを助ける「因幡の白うさぎ」のエピソードなどがあります。

[倭建命]

倭建命(やまとたけるのみこと)、元の名前は小碓命(おうすのみこと)は第十二代景行天皇の息子です。彼はあまりにも粗野で乱暴者だったことから父親に疎まれており、当時の政敵クマソ征伐を命じられ父親から遠ざけられてしまいます。その後、征伐をし英雄となり倭建命やまとたけるのみことを名乗るようになります。


日本書紀

内容と目的

「日本書紀」は、「古事記」に対して正史の年代記であると言われています。作られたのは「古事記」完成から8年後の720(養老4)年のこと。「古事記」の作成中からこちらも編纂がスタートしていたようで、その内容は密度が高くどのエピソードも細かく書かれています。

「古事記」と「日本書紀」、およそ同時期になぜ同じようなものが編纂されたかというと、「古事記」が国内向けに書かれたものに対して、「日本書紀」は国外に向けて書かれているからです。中国の歴史書を元に書かれており、文体も当時の「国際語」である漢文が使用されています。似ていますが、実は作られた目的は全く違います。「古事記」が私的な本であるのに対して、こちらは国家の公式本という位置付けになります。


特徴

編纂を命じたのは天武天皇で、書いたのは川島皇子(かわしまのみこ)含む12人の皇族と官吏たちのグループ。天武天皇がご崩御され一時中断されたものの、その後完成させたのは舎人親王(とねりしんのう)です。

全30巻からなり、漢文と編年体(事象が起こった順番)で日付や時系列が詳細に書かれています。ひとつの巻につき本伝と異伝がセットで、ひとつの巻に異伝が11もあるパターンもみられ、おかげで巻数もとても多いです。

神代から持統天皇の時代までの時代が書かれている点については上述した「古事記」と同じです。収められているエピソードは、微妙に「古事記」とは異なる点が見受けられます。

[大国主大神]

「古事記」では大国主大神は「因幡の白うさぎ」から結婚、その後の争いなど多くのエピソードが盛り込まれています。しかし「日本書紀」ではそのほとんどの話が省かれています。

[倭建命]

倭建命のエピソードは、「古事記」では父親に疎まれてクマソ征伐を任されています。反して、「日本書紀」では父親に疎まれてもいないし、むしろ征伐を成功させた自慢の息子よと褒め讃えるほど気に入られていることが挙げられます。


古事記と日本書紀の違い

「古事記」と「日本書紀」はどう違うのかについてですが、だいぶわかってきたんじゃないでしょうか。

下記にこの2つの違いをまとめています。ぜひ確認してみてください。

【古事記のまとめ】

■年代:712年完成
■巻数:全3巻(上・中・下巻)
■編纂を命じた人物:天武天皇
■編纂した人物:稗田阿礼・太安万侶
■目的:国内に向けて作られた天皇家の歴史書
■内容:人間味にあふれた登場人物や、ドラマチックな物語が特徴

【日本書紀のまとめ】

■年代: 720年完成
■巻数:全30巻
■編纂を命じた人物:天武天皇
■編纂した人物:舎人親王・川島皇子等
■目的:国外に向けて作られた国家の公式歴史書
■内容:編年体で書かれ、より事柄が詳細。物語ではなくきちんとした歴史書

違いは細かくありましたが、もちろん共通することもあります。

それは昔の日本人が、自分たちの生きた証を伝えようとしているということです。私達のために残してくれた贈り物としてこの先も大切に引き継いでいくのが、現代に生きる私達の役目だと思います。


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藤原 一葉

藤原 一葉

歴史や伝統文化、美術など、興味のある方はもちろんのこと、そうでない方にも楽しんでもらえる文章を目指しています!

物心ついた頃から、読書、歴史、世界遺産などに興味を持ち、大学では日本美術史を中心に学んできました。将来的に、趣味と仕事を兼ねることができたら人生楽しいだろうと好きなことを活かせる仕事を探し、行政の歴史書編纂所に勤務。その後、Web制作業、校正業を経て、現在は副業でライターのお仕事をしています。

趣味は、読書、美術館・博物館めぐり、アクセサリー作り、ヒトカラなど。

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