【チームラボ】絵巻物が描いた世界を、デジタルで描く。「存在する」という新しい体験[エプソン チームラボボーダレス]
麻布台ヒルズにある『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス』。
境界を越えて作品が移動し、人の存在に反応しながら絶えず変化し続ける空間には、世界中から多くの人が訪れています。
その空間を歩いていると、どこか日本の絵巻物を巡る感覚と重なります。長い巻物を少しずつ広げながら物語を追う絵巻物には、一つの場所から世界を眺める遠近法とは異なり、人が歩きながら景色を巡るような空間表現が描かれています。
チームラボでは、この日本画や絵巻物にも通じる空間の捉え方を「超主観空間」と呼び、鑑賞者を作品の外に立つ存在ではなく、その世界の中に存在する一人として位置づける体験を大切にしています。
今回公開された「Light Sculpture – Flow(光の彫刻)」シリーズは、光そのものを表現するのではなく、「存在とは何か」をテーマにした新たな作品群です。流れや秩序、色彩によって立ち上がる存在を描く「Chromatic Existence(色彩性存在)」シリーズや、実空間と鏡像空間を横断して一つの存在を生み出す「Asymmetric Existence(非対称性存在)」シリーズの作品など、新しい作品も発表されました。
今回、「Light Sculpture – Flow(光の彫刻)」シリーズの再公開にあわせて、チームラボ コミュニケーションディレクターの工藤 岳さんに作品に込めた思いや制作の背景を伺いました。光そのものを表現するのではなく、「存在とは何か」を描こうとする、光という素材を通したチームラボの挑戦をお届けします。
Light Sculpture – Flow
──「Light Sculpture – Flow(光の彫刻)」というシリーズ名からは、光そのものを彫刻した作品という印象を受けますが、どのような思いを込めて制作されたのでしょうか。
実は、私たちは『光を表現したい』というところから作品づくりを始めているわけではありません。最初にあるのは、『何を表現したいのか』ということです。
水彩画における絵の具や、木彫における木材のように、表現したい世界を形にする素材として最もふさわしいものは何かを考えた結果、今回は光を選びました。光そのものが目的なのではなく、あくまでも表現したいものを形にするための素材の一つなんです。

チームラボ《色彩性秩序に宿る闇の存在》© チームラボ
存在とは何か
──その「表現したいもの」とは何なのでしょうか。
私たちがずっと考えているのは、『存在とは何か』です。
例えば、海にできる渦を思い浮かべてみてください。渦には器のような輪郭はなく、バケツですくっても水しかありません。それでも私たちは「そこに渦がある」と認識します。物質そのものではなく、水の流れや秩序によって存在を感じているのです。そうした「存在」のあり方を、作品として表現できないかと考えています。
今回公開された作品群では、その考え方がさらに発展しています。色彩そのものが空間の秩序となって存在を形づくる「Chromatic Existence」、そして実空間と鏡像空間に現れる異なる存在を一つの彫刻として認識する「Asymmetric Existence」は、「存在とは物質なのか、それとも認識なのか」という問いを、鑑賞者自身の体験として投げかけています。

チームラボ《Asymmetric Cosmos》© チームラボ
超主観空間
──チームラボの作品には、日本文化や日本美術から受けた影響もあるのでしょうか。
私たちが『超主観空間』と呼んでいる考え方は、日本画や絵巻物に見られる空間認識から大きな影響を受けています。
西洋絵画では遠近法によって一つの視点から世界を見ますが、日本の絵巻物や洛中洛外図では、一つの画面の中に複数の視点が存在し、人が歩きながら景色を眺めているような空間が描かれています。だからこそ、チームラボの作品には「ここから見てください」という鑑賞位置がありません。歩き、立ち止まり、振り返るたびに景色が変わり、自分自身が世界の中心となって作品と関わっていくのです。

チームラボ《連続する軌跡:One Stroke》© チームラボ
育ち続ける作品
──公開後も作品は進化し続けているのでしょうか。
私たちは、作品は完成したら終わりだとは考えていません。公開後も、もっと良い体験ができるのではないかと考えながら更新を重ねています。
炎の立体感や背景の演出、作品同士が呼応する動きなど、大きな変化ばかりではありませんが、そうした細かな調整を積み重ねることで、作品そのものも少しずつ成長していくのです。
こうした更新の積み重ねによって、チームラボボーダレスは一度訪れて終わる場所ではなく、訪れるたびに新しい発見が生まれるミュージアムとなっています。今回の「Light Sculpture」の再公開と新シリーズの発表も、その進化の一つといえるでしょう。

チームラボ《境界のない群蝶:流れに還る》© チームラボ
存在していてほしい
──最後に、この作品を体験する方へメッセージをお願いします。
この中に、存在していてほしいです!
作品を理解しようとしたり、何か正解を探したりする必要はありません。ただその空間に立ち、自分自身がその世界の一部になることで、花が咲き、光が揺らぎ、作品は絶えず変化していきます。そこには、「見る人」と「見られる作品」という境界はありません。自分自身もこの空間を構成する一つの存在として、体験していただけたらうれしいです。
インターネットやSNSで目にするチームラボの映像や写真でも楽しめますが、写真になった瞬間、その世界は一つの視点へと固定されてしまいます。やはり実際に来ていただかないと、この体験は伝わらないと思います。

チームラボ《花と人、コントロールできないけれども共に生きる》© チームラボ
おわりに
作品を「見る」ことではなく、その世界の中に「存在する」こと。
今回公開された「Light Sculpture – Flow」シリーズでは、光や色彩、そして鏡像空間までを用いながら、「存在とは何か」という問いを、私たち自身の身体感覚を通して体験させてくれます。
その発想の背景にあるのは、日本の絵巻物や日本画が育んできた空間の捉え方、そして人と自然、世界との関係性を大切にする美意識から生まれたチームラボの感性と技術です。デジタル技術は、過去と未来を切り離すものではなく、日本文化が受け継いできた感性を新たな表現へとつないでいく手段にもなり得るのだと感じます。
写真や映像では、その一瞬しか切り取ることはできません。しかし、実際に空間へ足を踏み入れると、自分自身も作品を形づくる「存在」の一つとなり、その瞬間にしか生まれない景色に出会えます。
ぜひチームラボボーダレスを訪れ、「作品を見る」のではなく、その世界の中に身を置き、「存在する」という新しいアート体験を味わってみてください。

チームラボ《追われるカラス、追うカラスも追われるカラス:虚空の宇宙》© チームラボ
森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス
[所在地]麻布台ヒルズ ガーデンプラザB B1(東京都港区虎ノ門5丁目9)
[開館時間]8:30 – 21:00
※最終入館は閉館の1時間前 ※開館時間が変更になる場合がございます。公式ウェブサイトをご確認ください。 ※7.31(金)、9.1(火)は17時閉館(最終入館16時)、8.8〜8.15は22時閉館(最終入館21時)
[休館日]8.25(火)、9.8(火) ※変更になる場合がございます。公式ウェブサイトをご確認ください。
https://www.teamlab.art/jp/e/tokyo/
