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【茶道】現代にも通じる価値観! 大茶人の言葉から侘び茶の神髄を探る。村田珠光、武野紹鴎、千利休

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村田珠光

[むらたじゅこう]

侘び茶の創始者とされる村田珠光には、確固たる伝記が残されていないため、その人物像は詳しく分かっていません。奈良で生まれ僧侶として活動した後、還俗の期間を経て、とんちで有名な一休宗純の弟子になったと伝えられています。

一休和尚との出会いにより、禅の精神を学んだ珠光は、「茶禅一味」と言われる境地に至り、より精神的な部分に重きを置く茶の湯が生まれていきました。


名言1

「月も雲間(くもま)のなきは嫌(いや)にて候(そうろう)」

一切の欠けたところがない満月よりも、雲の間に見え隠れする月のほうが美しいという珠光の言葉になります。いわゆる「不足の美」を重要視し、すべてが完璧であるよりも、あえて不揃いだったり見えない部分があるほうが美しいという価値観を提唱しています。これは日本の美意識にも通じる考え方で、村田珠光がわび茶の祖とされている理由でもあります。


名言2

「藁屋(わらや)に名馬(めいば)繋ぎたるがよし」

粗末な藁の家で名馬を飼うように、侘びた茶室や粗末な道具と高価な名品を組み合わせることで美しさが生まれるという意味の言葉です。一説には、村田珠光が四畳半という狭い茶室を作り出したとも考えられており、あえて貧相な茶室で客をもてなすことで、茶の湯の本来の美を発見できるという価値観を提唱しています。


武野紹鴎

[たけのじょうおう]

千利休の師匠として知られる武野紹鴎は、若くして和歌や連歌に精通する知識人であり、商人としても成功を収めた人物でした。そのため、多くの名物を収集する一方で、歌道の価値観を転用し侘び茶の形成に貢献しました。


名言3

「連歌は枯れかじけて寒かれと云う。茶の湯の果てもその如く成りたき」

連歌の世界では「冷えさびる・枯れる」という言葉で美しさを表現するが、茶の湯でも同じような境地に至りたいと述べています。静けさや寂しさのなかに美を見出すことは、現代の茶道にも引き継がれており、古典文学の背景をもとにお茶を理解しようとした武野紹鴎らしい表現と言えます。


名言4

「侘びと云う言葉は、故人もいろいろに歌にも詠じけれども、ちかくは正直に慎み深く、おごらぬさまを侘びと云う」

武野紹鷗が弟子の千利休に宛てた『侘びの文』に出てくる一節で、先ほどの言葉と同様に和歌の知識を基本にして、侘びの精神に言及しています。この文章では、さらに人格的な要素に触れ、正直に慎み深くおごらない様子が侘びであると述べています。


千利休

[せんのりきゅう]

言わずと知れた侘び茶の大成者である千利休にも、その精神を体現する言葉が残されています。道具の良し悪しを吟味する茶の湯から、廉価で簡素な道具を使用し、亭主と客との精神的な結びつきを重要視した利休らしい言葉を紹介します。


名言5

「茶は服(ふく)のよきように、炭は湯の沸くように、夏は涼しく冬は暖かに、花は野にあるように、刻限は早めに、降らずとも雨の用意、相客(あいきゃく)に心せよ」

これは「利休七則」と呼ばれる茶の湯の心得です。一見すると非常に簡単なことのように思えますが、利休は「もしこれができたら、私はあなたの弟子になりましょう」と答えたそうです。以下に7つの教えの大意を載せておきます。

「茶は服のよきように」 お客さんが飲みやすいように抹茶の量や湯加減を調節しなさい

「炭は湯の沸くように」 炭の量や入れ方を調節し、上手に湯を沸かしなさい

「夏は涼しく冬は暖かに」 道具の組み合わせや点前を工夫して涼しさや暖かさを演出しなさい

「花は野にあるように」 茶席に飾る花は、自然のなかで見られるような美しさを大切にしなさい

「刻限は早めに」 時間にゆとりを持って行動し、心に余裕ができるようにしなさい

「降らずとも雨の用意」 晴れの日でも傘を用意するように、いつ何が起こっても対応できる準備をしておきなさい

「相客に心せよ」 同席するお客さんを尊重しなさい


名言6

「茶はさびて心はあつくもてなせよ道具はいつも有合(ありあい)にせよ」

「利休道歌(りきゅうどうか)」もしくは「利休百首(りきゅうひゃくしゅ)」と呼ばれる5・7・5・7・7の短歌形式で茶の湯の心得をまとめた一首です。

「道具などは有り合わせでもよいけれども、心だけは厚くもてなしなさい」という茶の湯に向かう姿勢を説いた言葉になります。高価な道具を自慢するのではなく、心を込めてお茶を点てるほうが大切だという侘び茶の精神の重要性に気づかせてくれます。


おわりに

侘び茶の成立に貢献した村田珠光、武野紹鷗、千利休の言葉から、彼らが求めていた茶の湯の精神を紹介しました。

今回取り上げた3人の言葉は、おもてなしの精神や人格の形成といった面で現代にも通じる価値観を含んでいます。

茶の湯という文化が、人びとの心の交流を大切にしていることを改めて認識させてくれるのではないでしょうか。


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島塚 啓

島塚 啓

昔から歴史や文学などの日本文化が好きで、大学では学芸員免許を取得しました。
今でも茶道や美術鑑賞など五感を満たしてくれる体験を求めて、日々情報収集に余念がありません。頭のなかをいっぱいにした後は思いっきって一歩踏み出してみましょう!感動的な出会いはいつも僕たちを待ち構えているはずです……。

一生のうちで好きなことに費やせる時間は、ほんのわずかしかありません。そんな貴重な時間を大切に過ごすために、みなさまが日本文化に触れる一助になれるような記事が書ければいいと思っています。

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