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【黒崎博監督】故・三浦春馬の「熱い」役者象を回想。映画『太陽の子』[広島国際映画祭2021]

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映画『太陽の子』

10数年ほど前にこの研究所員の一人が書いたという日記の一部を読だことでこの物語の着想を得たという黒崎監督。そこから感じ取ったメッセージを「どうしても一本の映画として見てもらいたい」と考えましたが、物語の内容は着想を得た当時としてはある意味危険な思想ととられる恐れもあり作品化が難しい時代だったと振り返ります。


そしてその後、時代としても東日本大震災などの出来事、経験を経て、徐々に「科学というものをいかに利用して人は生きていくか」というムーブメントが湧き上がってきた時代となり、作品作りとしても可能と判断された今日に至ったと回想しながら「結果的には10年かかってしまったけど、今考えると必要な期間だったとも思えます」と語られました。

またどうしても作品作りをやり遂げようとする意思には、やはり自身が広島に近い岡山という場所におり、もともとNHKの職員として広島に勤務していたことでこの地をホームグラウンドと意識する思いがあったこと、さらに研究所の舞台となった地として、黒崎監督がかつて大学時代に京都にいたことなども起因しているとコメントされました。

一方、日本の単独作品ではなくアメリカとの合作として海外のスタッフも多く作品作りに参加している本作。11月11日にはロサンゼルスの映画祭「アウェアネス映画祭」の長編映画部門において審査員グランプリを受賞。さらに今週からはアメリカ各地での公開も決まっているなど、海外を視野に入れた活動も活発であることに際して「日本の中だけでは作りたくなかったんです。この作品だからこそ、国境を超えてやりたいと思っていました」と作品に込めたメッセージへの強い思いを語られました。


役を演じるにあたって情熱溢れる俳優が出そろった本作ですが、黒崎監督がNHKのドラマ製作時に仕事を共にした有村架純、田中裕子らの他に、科学に対して純粋で無邪気な意思を見せるがゆえに、その裏にある危険性を見抜けず苦悩するという主人公の役柄として柳楽優弥という俳優しか思い浮かばなかったと語ります。

また2020年に急逝し本作が遺作となってしまった三浦春馬については「この作品を見ていただければお分かりになるかと思いますが、彼は全力にこの役に臨んでいました」と最大限の敬意を表します。

当時舞台出演に携わっていた頃、本作のオファーに訪れた際に「その場で(この役を)やりたいと言ってくれました」とその溢れる情熱を振り返る黒崎監督。その印象としては「熱いし、明るい。撮影の現場では役柄そのままのイメージで入って来たし、そのモチベーションの高さに励まされ、エネルギーを吹き込んでくれたのが春馬でした」と語ります。

その一方で「その裏には『仄暗い』面を持っていました。(人は)そういうものを持っていないと、俳優としての演技を見せることはできない。そんな大事な面を見せてくれたことにも感謝しています」、仕事を共にしたことで様々なものを得たことに対して深い感謝の意を表していました。


黒崎博 プロフィール


1969年生まれ、岡山県出身。92年にNHKに入局。2010年、ドラマ「火の魚」の演出により平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞放送部門、第36回放送文化基金賞演出賞、および東京ドラマアウォード2010演出賞を受賞。

『神の火』(Prometheus’ Fire)でサンダンス・インスティテュート/NHK賞2015にてスペシャル・メンション賞(特別賞)を受賞。「太陽の子」(GIFT OF FIRE)と改題し、2020年にパイロット版とも言うべきテレビドラマが放映される。

主な作品にNHK連続テレビ小説「ひよっこ」、「帽子」(08)、「火の魚」(09)、「チェイス?国税査察官?」(10)、「メイドインジャパン」(13)、「警察庁長官狙撃事件」(18)、「青天を衝け」(21)など、映画作品は『冬の日』(11)、『セカンドバージン』がある。


映画『太陽の子』

[公式サイト] https://taiyounoko-movie.jp/

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桂 伸也

桂 伸也

“和”という言葉で表現されるものには、人によって色んなイメージがあると思いますが、私は“整然として落ち着いたもの”という雰囲気を感じ取っています。

普段は芸能系ライターとして活動を行っており、かなり“にぎやかな”世界に生きていますが、その意味で“和”という言葉から受ける雰囲気に、普段から強い憧れや興味をもっていました。

なので、そんな素敵な“和”の世界へ、執筆を通して自らの船を漕ぎ出していきたいと思っています。

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