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【綾野剛・藤井道人監督】「ヤクザ映画」の新たな視点に至った経緯を振り返る。映画『ヤクザと家族 The Family』[広島国際映画祭2021]

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映画『ヤクザと家族 The Family』

藤井監督はかつて映画『新聞記者』を手掛けた際に仕事を共にした河村光庸プロデューサーから、次の作品の提案として「ヤクザ映画をやらないか?」という打診を受け、以前ヤクザ映画を手掛けた経験があることから「もう一度(このジャンルに)トライしたい」という返答とともにこのプロジェクトがスタートしたと振り返ります。

そしてこの物語のテーマを考える際、それこそすでに「ヤクザ映画」というジャンルが確立されるくらいに多くの作品が発表されていることから、新たなテーマとして「排除されゆくヤクザたち」という新しい視点を、家族的な関係をガイドラインとして描くことを考えていたと明かします。


しかし藤井監督は脚本の初稿を読み返した際に「(いかにも)“俺たちってかわいそうでしょ”と言っているように見えた」とストレートな物語として描いたものに対して違和感を覚えたといい、そこからクランクインまでの2〜3か月の間で、三つの時代にわたって描かれた物語にシフトしたという経緯を回想します。

一方、綾野がこのプロジェクトのオファーを受けた際、渡された脚本はまだ初期のもので時代を分割する前のものでしたが、「藤井道人という人間を、この本を通して見てみたいと思いました」と脚本の中に見えた藤井監督のセンスに大いに触発された様子を語ります。

また藤井監督は、当初考えたエンディングが公開された作品のものと比較しもっと悲壮感のあるものであったのに対し「“暴力”の負の連鎖を止めるにはどうすればいいだろうか」という課題を考え、綾野の意見などを取り入れて最終的な構成を作り上げたことを明かします。


劇中では綾野が自らスタントを行い、中には走ってきた車に引かれたりと衝撃的なシーンも多くある一方で、撮影現場はヘルメットなしでバイクを運転してみたりと「青春(の一幕のよう)でした」と振り返る綾野。人間の“怖さ”の演技ではピカイチだったと振り返る豊原らを含め、現場では和やかな笑顔があふれていたという現場だったと回想します。

しかし撮影を時間ギリギリまでテイクを重ね粘ることで「魔王」との異名を持つ藤井監督だけに、この現場でも綾野のスタントなど厳しい要求を課していたことを回想しながらも「(藤井監督は)それでいいんです」と藤井監督の進行に深い理解を示していたことを明かし、車に引かれるスタントも自ら志願して三回ほどのテイクを行うなど、絶大な信用を寄せていたことを吐露します。そんな綾野の俳優としての素養を絶賛、藤井監督も「ストイックで、誰よりも努力する人」と絶賛の言葉で返します。

広島弁にもあこがれ、「ぶち(すごく)」「じゃろ?(でしょ)」といった広島弁を若いころによく使っていたと語った綾野。「その土地の言葉で芝居ができるって、その作品妙折につきますよね」と語り、藤井監督とともにいつかは広島で映画を、と宣言して会場を沸かせていました。


綾野剛 プロフィール

1982年生まれ、岐阜県出身。高校卒業後に上京しモデル、バンド活動などを経て、2003年に『仮面ライダー555』で俳優デビューを果たす。以後2010年のテレビドラマ『Mother』や2012年、連続テレビ小説『カーネーション』などで注目を集め、2013年に映画『横道世之介』『夏の終り』で第37回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。以後注目作といえる多くの映画、テレビドラマ作品の重要な役柄を演じ高い評価を得ている。近年の出演作は映画『影裏』『ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-』『ホムンクルス』、テレビドラマ『MIU404』『恋はDeepに』『アバランチ』など。


藤井道人 プロフィール

1986年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。大学卒業後、2010年に映像集団「BABEL LABEL」を設立。伊坂幸太郎原作『オー!ファーザー』(14年)でデビュー。以降『青の帰り道』(18年)、『デイアンドナイト』(19年)、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20年)、『ヤクザと家族 The Family』(21年)、など精力的に作品を発表しており、2019年に公開された映画『新聞記者』では、第43回日本アカデミー賞で最優秀作品賞含む6部門受賞、他にも映画賞を多数受賞。ドラマ「新聞記者」(Netflix)は、’21年に配信予定。

映画『ヤクザと家族 The Family』

[公式サイト] https://www.yakuzatokazoku.com/

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桂 伸也

桂 伸也

“和”という言葉で表現されるものには、人によって色んなイメージがあると思いますが、私は“整然として落ち着いたもの”という雰囲気を感じ取っています。

普段は芸能系ライターとして活動を行っており、かなり“にぎやかな”世界に生きていますが、その意味で“和”という言葉から受ける雰囲気に、普段から強い憧れや興味をもっていました。

なので、そんな素敵な“和”の世界へ、執筆を通して自らの船を漕ぎ出していきたいと思っています。

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